RX-78GP02A ガンダム試作2号機
MS開発秘録
RX-78GP02A ガンダム試作2号機
FILE No.011
RX-78GP02A ガンダム試作2号機
一年戦争終結後のUC0081年10月、地球連邦軍再編開始に伴い最新兵器装備計画、コード名称GUNDAM DEVELOPMENT PROJECT=ガンダム開発計画と名づけられた極秘計画が立案された。戦後の世界情勢において発生が想定される紛争制圧等の作戦状況に適合する最強の戦術兵器開発計画である。連邦軍は本計画において軍内部のみで処理する選択を避け、月面フォン・ブラウン市で事業規模拡大を図るアナハイム・エレクトロニクス社と秘密協定を結び、これらについての各種設計案提出を指示。アナハイム社は地球連邦に点在する中小の軍需産業を傘下に収めつつ経営拡張を進める傍ら、ジオン共和国に残るかつてのジオン公国軍にあって最大手兵器製造開発企業であったジオニック社を吸収合併することで、軍事開発技術の更なる発展を目論んでいた。一年戦争に関連してもっとも利益を上げた企業体のひとつである。 ガンダム開発計画では強襲型重攻撃機案となる第二試案として、開発名称RX-78GP02=通称ガンダム試作2号機サイサリス設計試作のため、適所にジオニック系エンジニアを配して本機の設計を進めた。いわゆる重装甲モビルスーツの機体開発にもっとも適した人材配置を行ったのである。この機体は重装甲を生かした強襲型として単機攻撃能力重視に設計を特化させたもので、格闘戦を専任するGP01型と連携して作戦に用いられることも織り込まれていた。地上戦で要求ペイロードを満たしつつ機動力を有する機体であることが必要条件となっていた。そこで機動力の要となる熱核ジェットエンジンについては、ツィマッドの傑作機MS-09型でのノウハウ、実戦データを生かしたものであり、機体の装甲バランス、推進エンジンのレイアウトもそうした前例を充分に活かした設計となった。計画始動から2年後のUC0083に試作機は完成。またこの機体の設計データの一部は後のガンマ・ガンダムことRMS-099リック・ディアスにも影響を与えたといわれている。 しかし開発の初期段階でこの機体には別の開発目的が与えられることになった。戦略核攻撃機としての運用である。ミノフスキー粒子散布下の作戦区域にあって、旧態の電子誘導兵器が使用不可能であること、また搭載予定のMk82核弾頭の有効射程距離が短いことから、攻撃対象物まで極限に接近することの出来る兵器はモビルスーツ以外に選択肢は無かった。無論南極条約によって核兵器の使用を禁ずる既成事実は戦時下には存在したものの、新たな世界支配を目論む地球連邦政府の一部高官は、ジオン軍残存勢力掃討を名目に核攻撃機の開発を承認することになったのである。この選択肢を有していることもあって計画は当初から最高機密扱いになったといわれる。 結果として、本機は核攻撃後の作戦区域から機体を急速離脱させるため、放射能からの機体保護策と強大に発生す電磁パルス対策、そして耐熱機能、耐衝撃性を確実なものとするため機体各部の設計変更を行っている。特に頭部に集中する索敵カメラおよび視野形成コントロール機器類には充分な対策が講じられた。またガンダム開発計画の基本装備として接近戦用の60mmバルカン砲はそのままレイアウトに残されている。完成した試作機には形式名称としてRX-78GP02Aが与えられた。サブタイプのAはATOMIC GUNDAMの略記号だとされる。機体の装甲材はルナ・チタニウムを中心に三重の複合構造に作られ、核弾頭発射装置はこの機体専用に分割組み立て型のバズーカ形式で製作された。発射時の耐衝撃強度保持のため、本機のために専用設計された発射装置アトミック・バズーカの基部は背面搭載ユニットに連結され、その分離型バレル部分は後述する専用シールド内側に懸架される設計となった。防御システムの一環としてガンダム型に共通した分離型保護シールドは機体を被覆する大型のものが専用設計で製作され、核使用時に機体を保護する強制冷却装置が組み込まれたものとなった。通常型のガンダム設計と異なり大型化した脚部装甲部分はシールドでカバーしきれないため、あらかじめ冷却装置が組み込まれている。移動装置の要となる脚部推進装置と装甲レイアウト、大型ロケットエンジンを一体化させたフレキシブル スラスター バインダーが過剰に重装甲に作られているのはこの戦略核使用時の各種対策に起因する。特に作戦区域からの急速離脱を図るため、両肩のバインダーは重モビルスーツ本体の機動力を担保するための離脱用ブースターの役目も持つ。また作戦遂行時になんらかの接近戦(MS戦)が発生した場合を想定して、通常型モビルスーツ同様ビーム・サーベルも基本装備に加えられていた。本設計での機体重量バランスはルナ・チタニウム使用による強度設計が無ければ成し得なかったものでもあり、戦後のこの時点でそれが実現できたのはアナハイム社のみであったと言ってよい。 このGP02Aでは開発の段階からその主用目的となる爆心地付近での作戦遂行のため、通常型MSをはるかに上回る強度の球体外殻型装甲隔壁を設けることで、特にパイロット保護が重視された。そのためコア・ファイター=コア・ブロックの見直し構想は本機では最初から対象外となり、大戦末期に北米オーガスタ基地で開発されたRX-78NT-1ガンダム アレックスで試験運用された球体視野型コクピット隔壁が合わせて導入されている。核攻撃機としての性格を最重要視した結果、並行開発が進められていたコア・ファイターⅡでは作戦遂行時のパイロット保護回収目的を果たすことは困難であった。設計の複雑化は当初から避けられていたといってよい。 フォン・ブラウン市のアナハイム・エレクトロニクス社リバモア工場でロールアウトしたGP01およびこのGP02Aは評価試験のために強襲揚陸艦アルビオンに搭載され、オーストラリア トリントン基地に搬送されたが、アナハイム社で本計画が進行している情報は旧ジオン軍残党勢力にかなりのところが通じており、地上基地での戦術核発射試験の日時を狙ってデラーズ・フリートに属する元ジオン公国宇宙攻撃軍第302哨戒中隊隊長アナベル・ガトー少佐がこの機体の強奪を図ることができた背景には、旧ジオン系情報網が依然機能していたことを裏付けている。 地球連邦政府に対し、核攻撃機たる本機の存在を公表することで南極条約違反と宇宙移民弾圧を主張(地球連邦政府はこの声明をデラーズ・フリートのプロパガンダであるとして完全否定)したエギーユ・デラーズ中将率いる旧ジオン軍残存勢力デラーズ・フリートは、同年11月に行われた連邦軍観艦式を核攻撃、参加艦艇の65%殲滅に成功している。しかし宇宙戦仕様に改修されたRX-78GP01Fbの追撃により交戦後同機と共に全壊。その後その存在は連邦軍の記録からは一切が抹消された。以後核攻撃機の開発に関する情報は確認されていない。