FA-78-1 フルアーマーガンダム
MS開発秘録
FA-78-1 フルアーマーガンダム
FILE No.004
FA-78-1 フルアーマーガンダム
戦局が膠着状態となった一年戦争末期、ニュータイプと呼ばれる感応力に優れたパイロットの発生事例が認められたことで、ジオン公国では総軍管理の下、ニュータイプ能力者を戦争に活用するべく民間研究団体も含めて兵器運用へ向けて様々な研究開発が行われていた。宇宙空間に暮らす新たな人類の覚醒を標榜するジオン・ズム・ダイクンの思想はここでは兵器運用のために都合よく上書きされたと言ってよい。 ニュータイプという概念について半信半疑だとする意見の強かった地球連邦政府も、同じくしてこれらの事例に着目する場面は少しずつ現れていた。諜報機関を通じてもたらされていたジオンのそうしたニュータイプ専用兵器の情報も少しずつ連邦部内の一部に影響を与え始めていたのである。また特に前線の戦況報告に見られる自軍 第13独立戦隊のアムロ・レイ少尉の記録には、そうとしか考えられないニュータイプの発現例が多々見受けられたからでもある。当然のごとく地球連邦政府、連邦軍ではこれらに対してジオン同様にニュータイプを兵器利用する方向で協議会が結集した。ここでいうFSWS=Federal S・U・I・T Weapon Systemとは、連邦軍次期戦術兵器開発計画の総称であると同時に、実はニュータイプを軍事利用するための組織の欺瞞名称でもある。評議会の参加メンバーは軍、政府、軍需産業のなかから結集・構成され、実際に前線の状況を知るレビル大将以下の一部高官による証言もこの会の後押しを図ることとなった。また顧問としてハービック社の筆頭株主が座に名前を連ねている。 V作戦発動後に結集したFSWS開発本部では、開発が完了した連邦軍RXシリーズ モビルスーツをさらに強力な戦術兵器として格上げするべく、特にRX-78ガンダム型モビルスーツのフル・アーマー オペレーション プログラムに着手した。「正しくあるべき兵装状態」という概念は、実はRXシリーズ モビルスーツの設計開発で取り入れられたコア・ブロック・システムを拡大解釈したものでもあった。この時点で開発に利用できる人材発掘も急ピッチで進められたが、一番の問題はすぐに運用できるモビルスーツ母体としてまともに利用できるものが、ジャブロー基地に残るRX-78-2仕様(一部RX-78-1仕様)の機体5機のみであるという状態(ただしRX-78-1の4号機は別計画に使用するため除外された)。RX-77型は機体設計の全体バランスが重装甲に特化しており、運動性能では78型にはすでに及ばなかったことも計画の進行の歩を緩める要因となった。また量産型白兵戦用モビルスーツRGM-79=GM(GUNDAM Mass Products)には、製造企業からの強硬なプッシュで大量生産が行われた背景もあったため、増加試作で贅が尽くされたRX-78とは比べられないほど、その代用足り得ない資質の違いもあったのである。実用兵器としてフル・アーマー オペレーションの実装試作で用意されたプランは大きく分けて3つ。作戦状況が100%宇宙空間であることに絞ってRX-78-3型仕様の機体を核として一部誘導兵器を内蔵した外殻装甲を加え、長距離射程の大出力ビーム砲(外殻に対応型ジェネレーターを付加)、420mmロケット砲も固定武装化として加えるもの。補助推進装置も付加されている。もちろんガンダムとしてのオプション兵装も併用可能とする。これにはRX-78のフル・アーマー状態を指すFA-78-1が形式番号として与えられた。また同じくその外殻装甲に加えて大型の推進エンジンユニットを背面(から脚部にかけて)に接続した攻撃機案をFA-78-303(ただし正式記録に残らないため、この機番はFSWS開発部内の設計番号である)、最終的には実装状態のFA-78に大型戦闘艇相当の長距離砲4門を搭載した第二外殻ユニットを装備したFA-78-400型で開発が進んだ。いずれもこの計画ではこの特殊兵装をともなったモビルスーツ1機に対して戦艦1隻分あるいはそれ以上に相当する攻撃力をもたせようと画策した結果であった。モビルスーツの機動力をもってすれば無駄弾の無い攻撃が可能であると計算したことになる。しかしその原資となるRX-78ガンダム型モビルスーツの性能はニュータイプ パイロットによる操縦を前提に試算されたもので、開発そのものは設計データ上も各部位の試作も進んでいたが、当時連邦、ジオン双軍合わせても突出していた存在であったアムロ・レイ少尉クラスのパイロットの選出には手間取っており、比較的モビルスーツの操縦に優れた者からでしか実験部隊の仮編成はできなかった。もちろん連邦軍部内では他の軍事基地でも決戦兵器となりうる機体開発も進行しており、レイ少尉の使用を前提とした専用機の開発が北米オーガスタ基地で進められていた。次世代型高性能母機として配備が急がれた。 FA-78機の存在については実戦想定プログラムの画像データが戦後一部流出したことで一般には幻の計画機とされたが、実際に編成された実験部隊8機はノースポール級戦闘空母(強襲揚陸艦)に収容、UC0079年12月にルナツー宙域で錬成が開始された。ただしこれらの極秘作戦については連邦軍部内の記録データからはほとんど抹消されているためか、いまだ公的に開示されたものは無い。計画で想定していたのは月面基地グラナダ周辺のジオン防衛戦力の殲滅であったとされているが、実戦についての公的な記録も現段階では発見されていない。ただし同宙域でジオングによく似たモビルスーツと交戦した大型で灰色の連邦軍攻撃機に、ガンダム型と同じ頭部が確認されたとする目撃証言が残されている。