地球連邦軍がジオン公国の戦術兵器「モビルスーツ」に対抗して、独自のモビルスーツ開発における実効的な検討試作を開始したのはUC0077年7月に入ってからと言われている。その構想を進めるのに際して、それまでに宇宙空間戦やコロニー内戦闘で拿捕・回収したジオン軍モビルスーツの徹底的な解析が行われていた。当初地球連邦軍が想定した対モビルスーツ兵器として、戦闘状況に応じた航空および航宙兵力と地上戦に特化した機動車輌の開発が行われていたが、実際に様々な戦闘局面でザク型モビルスーツがもたらした戦術的有用性は、連邦軍部の想像をはるかに超えていたのである。 重装甲機動車輌として開発が進められたRX-75はザク型に充分対抗しうる兵器として設計・試作が完了、並行して固定武装に重点を置いた重火砲型RX-77は二足歩行型のいわゆる人型モビルスーツとして開発が完了した。これらに加え兵器としての方向性をまったく変えた、白兵戦用の高機動モビルスーツとして設計・試作が進められたのがRX-78通称ガンダム（連邦軍部内における初期開発名称はガンダーX-78型）である。この時点で採用が決定していた共有型コア・ブロック 操縦・回収システムを含め、開発における設計班主任として指揮を取ったのはトレノフ・Y・ミノフスキー博士に師事した新進の工学博士 テム・レイ技術士官であった。特にこのRX-78型の開発にあたっては、レイ博士による技術的革新が随所に織り込まれており、実際に原型機の試作にいたるまでに数十回の設計変更が行われた。ザクがジオン公国軍の汎用戦術兵器であるなら、さしずめこのガンダムは多目的戦術対応型機動兵器と呼べるものであった。レイ博士の徹底した軽量化策の裏づけとなったのは、すでに開発が進められていたルナ・チタニウム合金（後にガンダリウム アルファ合金として完成）の高精度化によるところが大きい。これこそは戦況にアドバンテージを許した連邦軍にとって、兵器開発上もっとも大きな回復要素となったのである。 設計案は極秘裏に地球上の秘匿開発施設で試作に移された（部位ごとに異なる施設が使われた）。まだ精製が容易ではなかったルナ・チタニウム合金を有効に使って計画された試作機はRX-78-1型として南米ジャブロー地下空洞基地（全体試作・実動試験）、ルナツー（資材製造・調整）、北米メキシコ湾に近いオーガスタ基地（FCS・アビオニクス）他数ヶ所で部位別に製造が進められた。この時点における調達資材で原型試作機を含む増加試作機の総数は全8機（と、それにともなう予備部品。RXシリーズの設計上の利点として機体全体を独立した３つの部位で換装を可能としていたので、部位別に破損にともなう調整・修理が発生した場合も、予備の部位を換装することにより容易に再出撃が可能であった）。ただしこれらの機体は構造強度試験や機能試験をそれぞれに行うため若干ずつ細部設計が異なる。組み上げが進んでいた初期仕様の２機についてはジャブローで調整と実用試験が行われた後、実戦テストを含めホワイトベース級 新造強襲揚陸艦に搭載するため極秘裏にサイド７に移送された。戦後に編纂された資料から検証が行われた結果、ヘリウムコア、外部冷却ユニット、大気圏再突入用装備が地上基地ですでに実装されていたことがわかっている（戦中および戦後間もない時期の資料ではルナツーで改装されたとされていた）。最終的に遅れて搬入された３号機は、ようやく完成した大出力ビーム・ライフルに合わせた機体の一部仕様変更（RX-78-2）が行われており、これに合わせて１,２号機にも同仕様の改修が行われた。RX-78型の操縦系統の中枢であるコア・ブロック回収モジュールに対して、上半身のAパート、下半身のBパートはそれぞれ予備部品が２ないしは３セットずつ用意されていたので、これまで製作実機数を検証する際の妨げとなっていたが、実際に完全体に組み上げられたモビルスーツの実装部品にのみ部分的な改装（部品換装）が行われたことが後に明らかとなった。１号機に対して２号機をRX-78-2だとする文献資料はこれらの混同から生じた誤りである。地球連邦軍の公式記録映像に収められた黒いガンダムと白いガンダムの機体（いずれもアクセントカラーは赤で、各所に無塗装のルナ・チタニウムの部位を見せているのが最初期の艤装。その後も保護塗料のテストで外観は細かく変更されているが、最終的に３機ともトリコロールのデモフライトカラーに整えられた）は同シリーズの最初期型であるRX-78-1の仕様を示すものとして、研究機関では貴重な資料として扱われている。