【魂の骨格】「DX超合金 SDF-1 マクロス」はいかに誕生したのか?━メカニカルデザイナー宮武一貴×コンセプト設計 元木博行(T-REX)

「TAMASHII NATION 2022」でお披露目以降も水面下で開発は進行しており、2026年6月1日より店頭予約がスタートする。全長約650mm、トランスフォーメーションやギミック満載の巨大モデルはいかに開発されたのか? 監修を担当したマクロス艦のデザイナーでもある宮武一貴氏、そして数々の「マクロス」シリーズの立体商品を手掛けてきた設計担当T-REXの元木博行氏にその魅力ともに語ってもらった。
すごいものになりそうだとは思っていました

――「DX超合金 SDF-1 マクロス」をご覧になられていかがですか?
宮武:今日初めて撮影で実物を見て……あえて実物という言い方をしてしまいますけど、立体としての正解に納得できたこと、はぁーと安堵の息をついたというのが正直なところですね。
元木:監修時は当然、まだ金型を彫る前の試作状態、出力品の状態のため、実際に600mmを超える大型モデルが本当に自重を支えられるのかなど、心配もありましたが、今日はテストショット、ほぼ製品版として見せていただいて、本当に感動しました。製品としてのまとまり、完成度は担当の木村さん含めてBANDAI SPIRITSさんに調整していただいて、よいものになりました。
――監修はいかがでしたか?
宮武:デザイナーとしては全ての打ち合わせが、あの巨大なマクロスを生み出すための“下描き”という言い方じゃないかな。監修の時点では、自分で絵を描いても、人に説明しても、すべてに恐怖があるんですよ。自分自身で納得してない。納得する条件を満たしていないんですよね。ただ、その条件を今日初めて満たしてしまった。
元木:通常の監修は1~2回のやりとりで終わってしまうのですが、それをフィードバックしてまた修正したものをお持ちして…を繰り返せたことでいいものができたと思います。
――ディテールの追加についてはいかがですか?
元木:最初の監修でお見せしたモデルで、設定や劇中のディテールをまずチェックしていただきましたよね。そのあと、足りないディテールに関しては1/1(商品原寸)の図面に描き込んでいただいて。あれがあったからこそマクロス艦の解像度、精密感がアップしました。
宮武:マクロス艦でなかったら、あの作業はなかった、意味をなさなかったと思います。マクロス艦だからこそ必要だったし、できる作業でした。
元木:それこそ劇場版とは違う、テレビ版としてのディテールアップをしていただけたので、本当にありがたかったです。モールドがシャープに入っていて、めちゃくちゃ見どころがありますよ。それこそ宮武さんに描いてもらった新ディテールがありますし、今までにないモデルであると言いきれます。

▲宮武氏による監修風景。1/1、および1/2サイズで出力した図面に対面し、宮武氏が直接手描きでディテールを追加しており、情報量が増幅された。
宮武:デザイナーとしては、頭の中で絵を描く、また紙の上で描くことが基本なんですよね。ただ、大きくは描けないんですよ。ビジュアルは何かしら描ける。必要なパーツを描くことはできる。現実の巨大空母、米軍の空母をいっぱい見返しました。ただ、見れば、見るほどに違うのがわかるんですよね。全長1.2kmのものはない。それを追いかけて描いているはずなんだけど、自分のイメージを描ききれていない。果たしてこれを描き続けて本当に自分で納得できるのか、答えが返ってくるかどうか、わからなかった。ただ、監修時、自分の家に運ばれてきた時から延々とね、すごいものになりそうだとは思っていましたよ。

▲「超時空要塞マクロス」放送40周年記念イベント 「超時空要塞マクロス展」における展示「変形! マクロスロボ!」。本編ダイジェスト映像に同期して要塞艦と強攻型の2形態への自動変形を実現。この時の宮武氏と元木氏の出会いが、「DX超合金 SDF-1 マクロス」にも繋がっていく。
元木:宮武さんとの出会いは企画「変形! マクロスロボ!」から繋がっていて。結構、密にやらせていただいてから今回の商品になるので、どこがポイント、肝になるかをすでに経験していたところも大きかったですね。しかも今回テレビ版マクロスとして作るためにお話を密にできたことは本当にBANDAI SPIRITSの木村さんに感謝しています。普段、ここまで余裕をもって何度も監修してもらうことはないんですよね。設計図にその場でディテールを描いていただくこともなかなか機会がないので、逆に商品が完成してしまうと寂しくなるくらいです(笑)。
光の表現が綺麗だよね
――やはり巨大だからこその設計の難しさもあるのでしょうか?
元木:全然あるんです。大型モデルはとにかく自重とロックですよね。当然、CAD設計時のモニター上では重量がかからないので、どんな形態でもカッチリしていますが、“実物”となるとリアルに650㎜の長さ、重さがあるので、たわみと強度とロックの問題が出てくる。ラチェットなど固定をしっかりできるような機構を各部に入れたり、本当に気を使いました。それでもまだ設計としては試作段階なので、金型を彫った時にBANDAI SPIRITSさんに実際に検証していただいて、現在のモデルが完成しました。
――大きいからこそ実現できたギミックはありますか?
元木:例えば、肩のシャッターは変形に際してスライドさせて出すことができます。
宮武:あれ、再現できてるの?
元木:はい。ジャラジャラと出てきます。あと内部の街の再現ですね。脚の側面が取り外し式で、街並みには奥行きがあり、メインストリートからミス・マクロスのコンサートホールまで再現しています。それこそ監修時、宮武さんに脚の内部構造について質問させていただきましたよね。今回、BANDAI SPIRITSさんに電飾の調整をすごくがんばっていただいて、1日の時間の流れを光で再現してもらっています。
宮武:光の表現が綺麗だよね。
元木:ディテール、ライティング含めて、いい演出になったと思います。

――電飾のスイッチでもあるケルカリアはいかがですか?
宮武:付属品として楽しいよね。かわいいし、ちゃんと動くんだから。
元木:最初に木村さんから「電飾のスイッチはケルカリアで!」と連絡を受けて、何を言ってんだろうと(笑)。でも、せっかくなので脚部の可動とか入れさせてもらって、やりすぎだったらオミットしてもらって…と設計データをお渡ししたんですけど、めちゃめちゃいい出来ですね。
宮武:ケルカリアはね、TVシリーズの中で一番好きなメカなんです。4足歩行をするように脚部が動くんですよ。ただ、デザインした時、現場には意味が伝わらなかったみたいなんだけど…。
元木:やはり大型モデルだからこそ、ケルカリアもちゃんと再現できました。
宮武:他にスイッチとして適切なメカもないよね(笑)。
元木:そうなんですよ。本当にちょうどいいサイズでした。
宮武:ケルカリアがマグネットスイッチにできるとは思ってなかったけど、ナイスアイデアでしたね。

巨大艦が主砲を撃たなかったら話にならない

――マクロスキャノンについてお聞かせください。
宮武:そもそも巨大艦が主砲を撃たなかったら話にならない。だからその一点突破でもって、作品の重心が変わる。バルキリーに全部重心がいくよりも、一瞬でもあの砲を撃たせないと、と思って設定しています。
元木:設計としては設定通りのバランスで問題ないと思っていても、あの大きさを出力してみると、実物の見え方が全然違っていました。設定の長さ、バランスは合っていても違うんですよね。そこで木村さんとも相談してキャノン部分を4種類、設定合わせと、+20mm、30mm、40mmをご用意させていただき、宮武さんに確認してもらいました。

▲「DX超合金 SDF-1 マクロス」の設計図面。初期試作を確認後、マクロスキャノンは砲身の長さを延長することで、立体としてのバランス調整が行われた。
宮武:見栄え的に20mm延長版を選ばせてもらいました。
元木:40mmはちょっと伸ばしすぎかなっていうのはあったんですけど、600mmを超えたモデルでも実際に見ていただけたからこそ、わかりやすかったと思います。


――ダイダロス、プロメテウスもすごいクオリティですよね。
元木:強攻型の腕ではなくて、しっかりと艦として作り込んでいるので、単艦でも結構なボリュームとギミックがあります。でも、そもそもなぜ艦艇を強攻型の手にしようと思ったんですか?
宮武:マクロス艦のための対比物が欲しかったから。約300m級の空母がマクロスと比べると、あそこまで小さく見えてしまう。それこそバルキリーがあって、空母があって、さらに大きい艦だと認識させるためですね。
元木:なるほど、空母が横にあっても、あんなに大きい! そういえば、劇場版マクロス艦の手になるアームドはTVシリーズにも出ていますが、劇場版で使おうとなったのは後付けなんですか?
宮武:後付けです。アームドはそもそも月面の浮きドックでしたからね。
元木:マクロス艦はダイダロス・アタックの印象が強すぎます。あの演出、使い方はすごいなと思っていて、今回のモデルでは絶対再現したい箇所でした。
宮武:しいて言えば、あのシーンはアニメーターの板野一郎君がいたからできたんです。板野君がいたからダイダロス・アタックの演出がイメージできた。バルキリーの戦闘だけじゃない、板野君の能力を最大限に発揮するために必要な演出でした。
元木:ダイダロスは設定通りに船首からスロープ3枚が展開しつつ、モンスター3体とトマホークを並べて壮観に作らせてもらいました。今回のサイズだとマクロス艦と比べても、モンスターだとハッキリ認識できるんですよね。これも見どころのひとつです。
寝てるものを立たせればいい

――変形についてお聞かせください。
宮武:まず船をロボットにすることは大前提で、要は「寝てるものを立たせればいいんだよ」って基本はそれだけ。ただ、デザインだけして、押しだす気もないですし、ある程度のことは必要ですから。そのなかでやりすぎても意味がないし、やらなくても意味がないんです。
元木:立たせるだけとおっしゃっていますが、実際に立体化すると、すごく演出的な動きをしてるんですよね。設定や映像ですでに変形の整合性は取れていて、ボディの変形、延長含めて、非常にシンプルながら効果的な変形、魅せ方なんです。艦橋の折りたたみによって胸周りから頭部になったりとか、本当にあのバランスのチェンジはデザイン的にすごいと思いつつも、やはり600mmを超える大きさが……。
宮武:「本当に650mmを実現するの?」って思ったけど、デザイナーとしてのサービス精神は基本的にあるわけですよ。何をしたらサービスになる、何をすればやりすぎになる、その辺の見極めは自分なりに付けている。回転などギミックの段どりは作った。作ったけど、「本当に大丈夫?」って(笑)。
元木:一番大事なのは重さと、しなりなんですよ。せっかくトランスフォームできるモデルなので、遊んでいただけるのが設計側としてはベストですよね。なのでダイキャストをふんだんに使わせてもらって強度を確保しつつ、強攻型でかっこよくポージングができて、さらに固定できるかを重視しました。要塞艦でもダイダロスとプロメテウスをしっかりとロックするためのパーツがあったり、各フォームで遊べることを意識して設計しています。
初めて納得できました

――最後にあらためて「DX超合金 SDF-1 マクロス」の魅力についてお聞かせください。
元木:今回は「特にここ頑張りました!」というよりトランスフォームを含めた全体が見どころです。胸周りの変形、艦橋、電飾、肩のシャッター、あとは脚部の延長ギミックとか。それこそ各部に見どころはあって、ダイダロスやプロメテウスも、あんなに作り込んだ立体はありませんからね。あえて言うとしたら、やはり本当に遊べるモデルとなっていることです。恐々と触ったり、飾るのではなく、ちゃんと変形して遊べる強度がある。設計としての一番のこだわりですね。
宮武:今までVF-1 バルキリーはかなりの商品が作られているわけだけど、遊べるグレードとして、マクロス艦もあれと同じレベルでないと意味がないという想いがありました。それこそバルキリーとマクロスを2本柱として立てた段階で、河森正治とライバル関係になるのは仕方がないことで。タカトク版の時代からマクロス艦も負けちゃいけないと思っていました。やはりバルキリーとマクロス、並び立たなければ意味がないというのがデザイナーの本意ですね。実のところ、今日ここに来るまではまだ恐怖感が抜けなかったですよ、自分自身の中で。実物を見るまでわからなかった。
元木:宮武さんに見ていただいたのはあくまでも試作品でしたから。
宮武:マクロス艦を自分として納得できたのが今日の時点が初めて、自分でその答えを得られた。初めて納得できました。本当にかっこいいと思います。
元木:一緒に携われていることが本当にありがたいですね。45年前、TV放送を観ていた身からすると、夢のようです。やはり宮武さんの監修、ディテールアップがなければ、物足りないものになっていたと思います。宮武さんとのやり取りでブラッシュアップできたからこそ、このクオリティとかっこよさを実現できました。宮武さんからお褒めの言葉をいただけて、もう大満足です。
宮武:スタジオぬえの基本理念ですが、デザインはアニメーションのための設定ではないんですよ。製品化してもらいたい。むしろ映像以上に製品自体が大切で、少なくとも私も河森も立体物が本当の答えだと思っています。これが今まで私の思い描いていたマクロス艦です。マクロス艦に関しては今以上の答えはないですよ。この答えは今後も変わらないでしょうね。
――ありがとうござました。

宮武一貴
メカニカルデザイナー、コンセプトデザイナー、イラストレーター。スタジオぬえ創立メンバーのひとり。日本のメカデザイナーの草分けであり、「マクロス」シリーズのほか、『マジンガーZ』『宇宙戦艦ヤマト』『聖戦士ダンバイン』『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』など数多の作品に携わる。近著として大日本絵画刊「宮武一貴のアド・インエクスプロラータ 明後日の空へ」を上梓。

元木博行(T-REX)
T-REX取締役。TAMASHII NATIONSではDX超合金マクロスシリーズ、ROBOT魂 ver. A.N.I.M.E.などのさまざまなブランドを手掛ける。また「マクロス放送40周年記念 超時空要塞マクロス展」における展示「変形! マクロスロボ!」では造形・変形機構アドバイザーとして参加。玩具のほか、プラモデル、イベント展示品など、さまざまな立体の造形/設計に携わるスペシャリスト。

「DX超合金 SDF-1 マクロス」 2026年11月発売予定
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