S.H.Figuarts & S.H.MonsterArts 特撮ジオラマワークショップ 第2回「オーブオリジン、雲海を飛ぶ!」編 2/2
セットのベースを作ろう!

雲海のセットを作るためのベースをセッティングしましょう。
まずは、ホリゾントを下から照らすためのライトを設置。
ここでは、ホームセンターで買った細長いLEDライトを使っています。
アルミ線を巻きつけるようにして机の高さより少し低い位置に固定。
画面外から光を当てるためのセッティングです。
背景を均一の明るさにするために、下からも照らすんですね。

これから綿雲を置いていく部分に、黒い布か黒い紙を敷いておきます。
これは、綿の隙間から見えるテーブルを隠すため。

ホームセンターや100円ショップで売られている角材を適当な長さにカットし、
空中に雲を固定するための、支柱を作ります。
100円ショップでも買える、Cクランプと呼ばれる道具で角材を固定しています。
撮影現場では、「シャコ万」と呼ばれているこの道具、
釘などを打ち込まなくても、簡単に固定ができるので重宝するのです。


角材にヒートンを付け、
そこに引っ掛ける形でテグスを張ります。
あらかじめ両側のヒートンの高さをそろえ、机と水平になるようにしておきましょう。
テグスは、二重になるように張るのがポイント。
綿雲で雲海を作ろう!

次は、いよいよ雲海を作っていきます。
使うのは、手芸用の綿!
(品質によっては薄く伸びるだけで塊にならないタイプもあるので注意)
袋入りの大きな塊で売られているので、
小さくちぎって丸め、塊をたくさん作っていきます。
なるべく細かいディテールをたくさん作った方が、より広い雲海に見えます。
ヘアムースのハードタイプを混ぜ込んであげると、形を保ちやすくなります。
カメラアングルまで目線を落としてレイアウトしていくのが、コツ!
綿の雲海に対して水平よりちょっと上がったくらいのアングルが、リアルに見えます。

そして、先ほど張ったテグスを使って空中にも綿雲を固定。
2本のテグスに、細くちぎった綿を挟み込むようにして固定していきます。
これが1本だと、滑ってなかなか固定できないんです。

ホリゾントの下の方に描いた、遠くの雲のイメージです。
カメラアングルから見ると、背景に溶け込んで見えますね。

さぁ、これで雲海のセットが出来上がりました!
カメラ位置から、手前の綿雲とホリゾントにパステルで描いた雲が繋がって見えれば大成功!
キャラクターを吊ろう!

舞台が雲海ということで、キャラクターも飛ばさないといけません。
今回は、「S.H.Figuarts ウルトラマンオーブ オーブオリジン」に登場してもらいます。

まず、キャラクターを吊るすための“渡し”を作ります。
先ほどと同じようにCクランプを使って、雲海の上に角材を鳥居状に組みます。
想定しているカメラアングルに支柱が入らないように、長さや高さを調節しましょう。

渡しができたら、テグスをオーブオリジンの首と足首に結び付けて吊るします。
(完成写真では、レタッチでテグスを消しています)

顔が見えるように、ベストな角度を探りましょう!

渡しの設置の仕方で、キャラクターに角度をつけることができます。
フィギュアが落ちない様、ご注意ください。
ライティングしよう!

最後はライティング。
小型のLEDライトなどを利用して照明を作っていきます。

太陽光線の方向を意識して、キャラクターと綿雲には上から、
ホリゾントには、均一に光を当てるのがポイントです。
撮影しよう!

いよいよ、撮影!
フレームを決めたら、それに合わせて綿雲のメリハリを調整します。
背の高い雲が、フレームの中でアクセントになります。
広々とした雲海を表現するため、広めにフレーミングしています。

実際には卓上サイズの、狭い範囲のセットですが、
ホリゾントに描いた雲の効果もあって、どこまでも続く広い雲海に見えますね!
これぞ、特撮マジック!
照明で太陽を作ろう!

最後にもう1アイディアをプラスしてみましょう!
ホリゾントの一部をくりぬいて、そこに電球をセットします。

電球を光らせると……太陽になるんです!
電球を使わずに穴だけを開け、裏からLEDペンライトなどで照らしてもOK。
(発熱する電球は危険ですので、使わないようにしましょう)
くりぬきの位置は、雲を描きはじめる前にアングルを想定して決めておくのがベストです。

キャラクターを「S.H.MonsterArts ガメラ(1999)」に選手交代して、撮影!


ガメラに対して、カッコいい位置に太陽がくるように、 フレーミングを調整しましょう。
このガメラと白昼の雲海というのも新鮮な画ヅラですね。
上段は、レタッチ前の写真。背景の合せ目やテグスを消しています。
INTERVIEW 三池敏夫 PART 2

--「雲海」は、三池さんからご提案いただいた題材でしたが、なぜこのシチュエーションを選ばれたのでしょうか?
ガメラやウルトラマンなど空を飛ぶキャラクターがラインナップされているので、今回ワークショップの中には是非、盛り込もうと思っていました。ポイントなのは、比較的簡単にできるジオラマだということです。背景の空を用意して、そこに雲をササッと描いて、手前の平らな机の上に綿雲があれば、もうそれっぽい画になる。シンプルなセッティングでしょう?
--お子さんでも真似できる工作感覚も魅力ですね!
そうなんです。最近、僕が講師になって日本各地で特撮ワークショップをやらせてもらってますが、そこでもこの綿雲の雲海を作ることが多いんですよ。
--綿を使って雲海を作るというのは、実際に特撮映画の現場でも使われているテクニックなんでしょうか?
最近は、CGで表現されることが多いので滅多にやらなくなってしまいましたが、昭和の特撮では当たり前の技法でした。僕が参加した作品でいちばん分かりやすいのは、『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年)ですね。夕日の雲海を飛ぶガメラや、空中戦の場面では、綿雲でミニチュアセットを作っています。30年前の映画だけど『首都消失』(1987年)でも大量の綿を使って雲のセットを作りましたね。最近だと、『巨神兵東京に現わる』(2012年)のキノコ雲にも綿を使っています。この作品は、あえて昔の技法を使って撮ろうというコンセプトでしたからね。
--今回は、パステルを使って描く雲のリアルさにも驚かされました!
毎度、綿雲のワークショップでやっている技法ですけど、実際の特撮の現場では、パステルで雲なんて描きません(笑)。パステルを使うと、絵の具と違って乾き時間が不要なので短時間で作業を進めるワークショップには都合がいいんですが、所詮は粉なので保存には向かないですね。
--実際には、どのような技法を使われているんですか?
背景塗装という専門職が、エアーブラシを使って塗料を吹き付けて作画します。円谷英二監督の頃から背景画を描かれている大ベテランの島倉二千六さんという方が有名で、雲だけではなく、『怪獣総進撃』(1968年)の最後の戦いで出てくる見事な富士山も島倉さんのお仕事。背景の力でミニチュアセットをもっとよく見せてくれるんですね。東洋一と言われていた東宝の第9ステージに広いミニチュアセットを組んでも、やっぱり上から見ればセットの広さには限界がある。そこに“奥行き”をつけてくれるのが、背景の力なんです。
--今回は、エアーブラシをパステルに置き換えたような形ですね。
そう、パステルで描いた部分をこすってボカしただけで、手軽にエアーブラシで吹いたような柔らかいタッチの表現ができるんです。ただ、使うものは違っても、基本的な作業手順は島倉さんたちがエアーブラシで描かれている時の工程を念頭にやっています。島倉さんは今も現役で活躍されていて、スーパー戦隊シリーズの特撮やウルトラマンシリーズでも背景を描かれています、僕らはその技を間近で見てきました。まるで写真にしか見えないようなリアルな雲を、現場では全く悩まずに大きなホリゾントに描いていかれるんです。こういう技が、円谷英二の特撮を支えていたんだっていうのを、実際に体験することで多くの人に知ってもらいたいですね。
--次回のワークショップも楽しみです!
皆さん、写真を撮る時にフィギュア以外のところが手隙になりがちですよね。前回もそうでしたが、画作りで大事なのは、カメラアングルと背景とライティング。セットの見栄えをよくすることで、キャラクターを立たせるという仕事を長年やってきましたので、次も面白いジオラマを作りたいと思います! 楽しみにして下さい。

三池敏夫(みいけ・としお)
1961年生まれ。特殊美術デザイナーとして、数々の特撮作品を手がける。現在は、「特撮研究所」所属。代表作:『鳥人戦隊ジェットマン』、平成ガメラ3部作、ミレニアムゴジラシリーズ、『巨神兵東京に現わる』、『進撃の巨人』、『シン・ゴジラ』、『精霊の守人』、『夢の挑戦 ゴジラ須賀川に現る』。特技監督として、『大魔神カノン』、『ウルトラマンサーガ』も手がけている。

「可動によるキャラクター表現の追求」をテーマに、「造形」「可動」「彩色」とあら ゆるフィギュアの技術を凝縮した手の平サイズのスタンダードフィギュアシリーズです。

S.H.Figuartsで培われた、可動(アクション)フィギュアの技術を使用し、『怪獣(モンスター)』にフィーチャーしたアクションフィギュアシリーズ。それが『S.H.MonsterArts(エス・エイチ・モンスターアーツ)』である。
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- ©円谷プロ ©ウルトラマンオーブ製作委員会・テレビ東京