魂の骨格 「METAL BUILD ストライクフリーダムガンダム」発売記念 アニメーター・重田 智 スペシャルインタビュー
2015-11-20 17:00 更新
連動アイテムとなる「光の翼」が発表され、ついにその全貌が明らかになった「METAL BUILD ストライクフリーダムガンダム」。
開発陣には、ディレクションにケミカルアタック・坂本洋一氏、カラーコーディネートにデコマスラボ・広瀬裕之氏、そして設計はバンダイ・スカルファイブとこれまでの定評あるメンバーが再結集して生み出された。
このアイテムがいかにして開発されたのか。そして、その開発にこめられた新たなる挑戦とは?
「METAL BUILDストライクフリーダムガンダム」の魅力を解き明かすとともに、その監修を手掛けた重田 智氏の魂の骨格に迫る。
――重田さん監修のMETAL BUILDとしては「フリーダム」、「デスティニー」と来て、ついに満を持して「ストライクフリーダム」の登場となります。今回の開発に関わられていかがでしたでしょうか?
重田:開発スタッフは以前から変わらず同じでしたので、すでに“SEEDらしさ”の機微みたいなものを理解してもらっている状態でのスタートでした。今更こちらから伝えることもあまりなくて、フリーダムガンダムの時のように図面を描いて指定を入れて……みたいなことはしませんでした。初回の打ち合わせの段階で、すでにテイク・ワンのサンプルがありましたから(笑)。
――そうなりますと、具体的にはどのような形で関わられたのでしょうか?
重田:ディテール、デザイン、カラーリング、それぞれ専門家に担当してもらっているので、立体造形や可動部分の構造など技術的な部分ではあまりすることがなくて。基本的にはコンセプトなどを伝えるスーパーバイザー的な役割ですね。それと、誰かがコンセプトの最終ジャッジを下さないといけない場面でのジャッジメントの役割でもありました。もっとも、自分がこのチームの中で一番偉いわけでもないのですが(笑)。本編映像でのメカ作画の責任者ということで許してもらっています(笑)。
――では、そのコンセプトについてお聞かせください。
重田:今回、このコンセプト作りがもっとも苦労しました。というのもキャラクター性においてフリーダムと差別化できる、なおかつデスティニーに対して負けないというイメージのキーワードが、なかなか見つからなかったんです。デスティニーを“悪魔”とするなら、対比となるのは“天使”なのですが、個人的に“天使”と言う言葉の響きがなんだか弱々しくて、ストライクフリーダムらしいイメージが“天使”というワードからは浮かばなかったんです。
――そこから今のコンセプトになるわけですね。
重田:坂本さんと相談していて出てきた装甲のイメージが「西洋甲冑」でした。そこからラクスを守るナイト、聖騎士“パラディン”というキーワードへと繋がりました。ずいぶん逞しいイメージになったと思います。デスティニーと2体並べたとき、ストライクフリーダムが負けて見えてしまうと困るんですよ。そういう意味ではデスティニーが先にいたからこそ、意図的にマッシブなイメージに持っていったところはありますね。
――“マッシブ”な箇所について、もう少し説明して頂いてもよろしいでしょうか?
重田:胸を張ったように“見えるよう”に、意図的に両サイドのダクト位置を上げるなどすることで、全体的なプロポーションの演出をしています。“マッシブ”と言っても、モビルスーツ自体に筋肉組織があるわけではないので、躍動感のあるものになるようラインや面の構成を斜めや八の字にするなどして、妙に落ち着きすぎずに変化に富んだものになるよう意識しています。あとはやはり“ふくらはぎ”の美しさですね。ガンダムにはそういった部分を表現できるデザイン要素があると思います。
――こうしてでき上がった「METAL BUILD ストライクフリーダムガンダム」の見どころについてお聞かせください。
重田:見どころはやっぱり輝く黄金の関節ブロックや内部フレームですね。“完全な黄金の関節ブロック”はストライクフリーダム立体物史上初です。立体物化での黄金の関節ブロックの再現に関しては、ユーザーの方からも「もっと輝く金を……」という声がよくあがるものですが、それは開発側としても思っていたんですよ。本編の制作当時、全身を金で光らせるメカの演出が多かったので、「今度は関節を黄金に光らせよう!」というアイデアになったんですが、まさか10年以上もこの部分で商品化に困るとは思いませんでしたね(笑)。
でも、ようやく本当の輝く黄金色を再現できました。実現できたのはMETAL BUILDならではの金属パーツであったことや、電解メッキといった技術があったからですね。金属は可動時の擦れに対して強い耐性がありますし、プラ系素材の関節であればこうはいかなかったと思います。デスティニーでも関節全般を金属にしていたので、それを踏まえて実現できた技術ですね。かつてないほどゴージャスになっていると思いますよ(笑)。
――関節のお話が出ましたが、可動域はいかがでしょうか?
重田:オープニングのタイトルバックのようにロングライフルを構えたポージングがこのレベルで再現できるのは正直すごいと思いました。開発の初期段階で再現したいポージングなどを伝えることもよくあるんですが、スタッフ一同、自分以上にのめり込んでくれているところがあって……むしろ、「こんなポーズを再現したいので、可動域をこうしました」みたいなことを言ってくれるんです。脚を左右に広げた際、既存の立体物は構造上、脚が短く見えてしまうんですね。この辺りも脚の付け根の構造の工夫により、自然に広がる様になっています。腰から腹部の“ひねり”なども、METAL BUILDでは人体可動を意識した上で、可動域や構造を造り込んでもらっています。
――ドラグーンについてはいかがでしょうか?
重田:ドラグーンはフリーダムと同じ様に“翼”と表現することが多いですが、イメージ的には“マント”なんだと思うんです。そういう意味では広げた時に(デスティニーと比べて)印象が弱くなってしまうんですね。だから、あえて「シルエットに変化をつけるために、各ドラグーンのサイズやデザインが違ってもいいのでは?」と提案しました。あえてサイズの大小を付けていて、ウイング本体基部のデザインも片側4本が異なっています。それぞれのドラグーンが違う性能として物語の中では設計されているとか考えても面白いですよ。たとえば、ビームの出力や射程、用途、運動性能が違っているとか。I~VIIIまでのマーキングにも注目してほしいですね。また、ウイング基部が大きめに作られているので、ドラグーンを翼から射出してからも存在感がかなり出せたのではないかと思います。
――ドラグーンを広げると迫力がありますよね。
重田:正面から見た時に両方の翼(ドラグーン)が大きく見えるように高さを上げているからでしょうね。それと劇中は大河原先生の設定画より、画面上での見栄えもあって翼の開く角度をかなり大きくして描いていたんですよ。ただ、立体でそのまま展開するとウイング上部の左右ブロックが干渉してしまうので、基部の根本に可動域を設けてもらって、干渉しないようにしました。翼を広げるにしても天地方向への開閉だけでなく、前後方向への可動もあって、それによってずいぶんと立体としての見え方が豊かになったんじゃないかと思います。また、ウイングとしてどう使っているかの設定は“男の子”が想像して楽しむ部分でもありますよね(笑)。
――今回、「光の翼オプションセット」のパッケージスリーブ用に描いて頂いたイラストについてお聞かせください。
重田:もう「面倒くさかった!」の一言です(笑)。アニメ版権の場合はなるべく設定画準拠で描きますが、今回はなるべくMETAL BUILD版のディテールで描こうと始めたんですが、面の構成や装甲の色分け、関節の構造など後悔してもしきれないくらい大変でした。ただ、苦労しただけにMETAL BUILDに見えるようにはなったと思います。
――HDリマスター版のキービジュアルで描かれたデスティニーがMETAL BUILDのようなイメージだったので、今回、お願いさせて頂きました。
重田:そうですね、あの時は(笑)。本編放送時と同じイメージではせっかく購入するユーザーの方にも申しわけないかなと、METAL BUILD的デザインのデスティニーを描いたんです。
――このイラスト同様、今回、ついにデスティニーガンダムとストライクフリーダムがMETAL BUILDで揃いますが、あらためて並んだ姿をご覧になっていかがでしょうか?
重田:ストライクフリーダムが負けないようにと開発したのですけど、逆に並べて見た時にデスティニーが負けてしまわないかも心配でしたが、そんなこともないですね。育ての親としてはどちらにも愛着がありますから。デスティニーは真っ赤な翼が開くとかなり見栄えと迫力が増しますね。2機はディテールや色なども含めて正対するイメージになればいいと思っていたんです。
――魂ネイション2015ではこのイラスト同様、“光の翼”を装着してディスプレイさせて頂きました。
重田:これを個人宅で飾るには勇気とスペースがいるとは思うんですけど、絶対にみんな一度は付けてみたいですよね(笑)。記憶が曖昧なところもあるのですが、当時、福田さん(福田己津央監督)に「ドラグーンを射出した後、ウイングの基部の方はどうなるんですか?」と聞いたことがあって。その時、「ビームウイングでも出しといて」と言われたことが始まりですかね(笑)。でも、やはりこれなしでは、劇中においてシルエットが少し貧弱に見えてしまうんですね。ビームウイングの色をデスティニーと変えることで画面での見分けも付きやすくなるので出すことにしておいてよかったです。
――ちなみに今回商品化する「光の翼」は、本編放送当時に重田さんが描かれた設定画を参考にさせて頂いています。
重田:制作時は商品化はされないと思っていて、作画優先の方向で勢いで大きく描いたんですよ。でも、今思うとサイズが大きすぎて、商品開発側としてはいろいろと困ることが多いみたいですねぇ(笑)。
――光の翼を立体化するに当たり、クリアパーツに加えて特殊なPPシート(HALS®)を使用して、ビームのゆらぎも表現しています。
重田:今回のビームウイングは、反射だけでこれだけ光ってみえるのは不思議ですね。翼全体のカラーリングもグラデーションになっているので、これが発売される時はユーザーの方にはバックライトで照らして飾ってみてほしいです。翼を付けることが前提だと思うユーザーの方は多いと思いますので、今回の商品化は嬉しいと思いますし、デスティニー用の翼もぜひ商品化してもらいたいですね。
――最後に、「METAL BUILD ストライクフリーダムガンダム」を楽しみにしているユーザーの皆様へメッセージをお願いします。
重田:METAL BUILDは手に取った時に、絶妙の大きさと重さがあります。それに思う存分、ポージングを取らせたり触ったりできるのもMETAL BUILDという完成品ならではの魅力だと思います。子供の頃、「TV画面の中と玩具は何でこんなに違うの?」と思っていたことを考えると、ものすごくよくできている完成品ではないかと思います。アニメ画面そっくりと言うと語弊があるかもしれませんが、それ以上にイメージ豊かに二次元を三次元に再現できたと思います。
――アニメで見たイメージや印象が、立体物に昇華されたということでしょうか。
重田:ウェブ上の画像だとディテールや色など見えづらいところもあると思うのですが、実物を触ってもらうと細かいところの処理もわかってもらえるはずです。METAL BUILDは手にして、眺めまわして遊ぶことが醍醐味です。
何よりデスティニー、ストライクフリーダムが並ぶと本当に壮観です。劇中ではストライクフリーダムとデスティニーが戦うシーンはそれほど多くなかったですが、やはりライバル機なので、だからこそユーザーの方にはMETAL BUILDでの2機の戦いを実現させてほしいですね。
――ありがとうございました。
重田 智(しげた さとし)
アニメーター。サンライズ作品をはじめ、数々のメカアニメ作品に参加。
代表作は『新世紀GPX サイバーフォーミュラ』OVAシリーズ、『GEAR戦士 電童』、『機動戦士ガンダムSEED』シリーズ、『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』など。
『機動戦士ガンダムSEED』、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』では、2013年から展開した「HDリマスタープロジェクト」まで一貫してチーフメカ作画監督を務めている。
METAL BUILD さまざまなクリエイターの手を介し、『超合金の良さ』と『作品に応じたデザインアレンジ』が融合した究極の完成品トイブランドです。リアルロボットをモチーフにするため表面的な合金使用は抑えられつつ、敢えて金属のまま露出させるようなデザインアレンジ、可動性のための造形アレンジ、重さを感じる設計など随所に超合金シリーズのノウハウが活きています。 |
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