魂の骨格 第2回 造形師 竹谷隆之 (後編)
2008-05-30 00:00 更新
■ 材料の話
造形をつくる時、身近にある物で使えそうなものがあれば、それを加工したりして流用することもあります。昆虫や甲殻類の生き物が多いですね。
常にある程度の種類は工房にあります。
アナザーシャドームーンという作品をホビージャパン誌面用に作る際、クワガタのアゴを使ったこともあります。谷口(順一)さんが作業をしてくれたんですが、あとで原型用に直すときにその部分がなくなってたんで、谷口さんがパテで作り直すハメになって…。申し分けなく思っています(笑)。
あとサメの歯、あれははいいですよ。
並んでる順で少しずつ大きさが違うところがいいんです。
同じ形で違う大きさの物をひとつひとつ造っていくのって面倒なんですよね(笑)。 それにサメの歯の独特な形が好きなんです。
他には流木とか。
雰囲気を出すのにちょうど良いので。川や海で見つけたのを加工せずにそのまま使ったりもしています。昔は外食をした時に、立派な海老とか蟹が出てくると、殻などが何かに使えるんじゃないかなと思って、よく持って帰ってました。 でも、結局は使わないことが多いんですけど(笑)。
自然の物を流用してると言いましたが、無理して使おうというわけではないです。
自然物にこだわってどうのこうのとか、そういうのではなく、造る過程で「あれが使えるんじゃないか」と思いついたら使ってみています。クワガタのアゴもそうだけど、造りたいイメージのテイストに合っているかが重要です。
■ 道具
プロの造形師って、よく特別な道具や自作の道具を使ってるんではないかと思われることが多いです。
でも僕の場合は特にそのようなことはないと思いますね。 皆さんと同じ、普通の道具。 特に道具を自分で作ることもしてないですしね。 どうしても必要になった時に、自作したこともありましたけど。
なので僕が造形で使っている道具に関しては、皆さんとの違いは特にないと思います。 ここにある道具に関しても、大きさが違うもので種類はそれなりにありますが、 道具自体は特殊なものはないです。
古い物は好きなのですが、道具に関しては同じ道具を使い続けるこだわりもないです。 メンテナンスをしていつも使える状態にしておくことは気にしていますけど。
■ 塗料
塗料に関しても、特殊なものを使ってると思われがちですが、これも全然そんなことないです。 エアブラシも同じで一般に市販されてるのですし。 期待はずれですかね(笑)。あ、「さびカラー」は大好きです。何でもサビさせられるんで(笑)。
素材に適した種類のものを使うというのは当然として、塗り方や仕上がりには重点を置いています。 S.I.C.はよくグラデーションとか良いって言われますが、こちらもあまり意識してなく、 イメージを表現した時に結果としてそのようになったと言う方が正しいです。
竹谷氏の工房にあった道具類や塗料 |
■ 造形について
うーん、あえて答えるとすれば、作品に対して気が済むまで造り続けたいっていう気持ちですかね。 でもたいていは納期があるので、そういうわけにはなかなかいきません(笑)。 時間内でできる限りやる、ギリギリまでやるという感じです。 作品を造る時は、まず最初に全体の形をイメージします。 続いてスケッチをしますが、この時点では最終的なところまで完全な状態ではないんです。なので、出来上がったスケッチを見つつ、どういう風に造るかを考えながら造っていく感じですかね。 その際に気にしているのは、あるデザインに対して、何が必要ないのかっていう判断をしていくことです。 どこを強調してどこを抑えるべきかっていうことを考えています…あたりまえですかね…(笑)
■ S.I.C.について
S.I.C.では皆さんが持っているキャラクターのイメージを大切にしたいです。
S.I.C.のアレンジで僕がそのイメージを変えてやろうとかは思ってないです。
あとは量産化する商品なので、自分でこうしたいと思うまま造るのではなく、 商品として成立するようバランスを考えて造ることもあります。
ラインナップの決定に関して言うと、最近は「いずれこのキャラクターやるんでしょ?」ってことでバンダイさんから言われ る前に、自分から先に造るって言っちゃうこともあります。よね(笑)。
価格:6,300円(税込)
発売日:2008年5月31日
対象:15才~
基本スペック
・仮面ライダーX&アポロガイストの2体セット
・原型製作:竹谷隆之、藤岡ユキオ、他
竹谷 隆之 (たけや たかゆき)
1963年生まれ/北海道出身
・雑誌・ゲーム・映像媒体での造形製作及びデザインを行う
・ S.I.C.の原型製作
・ オリジナル作品集
「漁師の角度(1999年)」(株式会社ホビージャパン)を発行
(C) 石森プロ・東映