魂の骨格 第5回 つくりもの 安藤賢司 (前編)
2009-02-13 00:00 更新
今回はS.I.C.シリーズの大黒柱、つくりもの安藤賢司氏です。
ご存知の通り安藤さんは原型師として紹介されることがほとんどですが、名刺には「原型師」ではなく「つくりもの」と印刷されています。「つくりもの」とは?とお聞きしてみると、「特に意味はなくて、友人に相談して最初に名刺をつくった時からそうしています。」とのことでした。「○○もの」という肩書きは「傾奇者」とか「ならず者」でしか聞いたことない気もしますが、ただ安藤さんの温和な感じにとても似合っています。
多忙なスケジュールの安藤さんですが、運良くS.I.C.NEWアイテムの原型打合せ後にインタビューをお願いすることができました。もちろん、今月末ついにリリースとなるS.I.C.新シリーズ「S.I.C.極魂(きわみだましい)」について聞いてきました。
■ 極魂は偶然生まれた
バンダイ 泉さん(※1)と匠魂の話をしていて、盛り上がってる時に偶然出てきたんです。匠魂の原型をやっているときに「匠魂に関節を入れたい」と僕がリクエストして。
たださすがに匠魂スケールまで小さいと、僕が原型で関節を最大限に生かす微妙な凹凸や陰影を表現しても、量産化した商品での再現性とコストパフォーマンスが商品として成立しなかったようです。ここだけの話、原型に勝手に関節を入れて納品したけど、できあがった商品では見事省略されていたのがありましたよ(笑)。
そういう作業を繰り返しているうちに、話に勢いがつき、だんだんと盛り上がっていきまして(笑)。だったら諸々の条件をクリアできそうな『全高約120mm』サイズだったらどうかという話になり、新しいS.I.C.シリーズの企画がなんとなくスタートしたんです。となると、まずは120mmというサイズで大丈夫なのかを確かめないといけません。泉さんがS.I.C.をスキャンしてダウンサイジングした試作を用意してくれましたが、これが・・・・。
泉さんも同じ意見だったんですけど、それがイマイチしっくりこなくて。大きいサイズのものをそのまま縮めても駄目でしたね。やっぱり違うんですね。なので、せっかく新シリーズでやるなら、一から造ろうということになって、試作を造りました。オリジナルの原型とクオリティを比較したり、ガシガシとポージング可動させてみたり、色々やってみました。そういうことを繰り返していくうちに商品化に結びついたという経緯です。
極魂は、こんな感じで偶然生まれたのですが、今思えば必然だったと思います。
■ 「S.I.C. VOL.32 仮面ライダーヒビキ」 と「極魂 仮面ライダーヒビキ 」の原型製作の違いは日本人と外国人?
『デザインと関節可動』という基本コンセプトはS.I.C.と同じです。ただ、スケールの違いにより意味が全然違います。それは通常のサイズのS.I.C.を3Dスキャンして縮小した試作がしっくりこなかったときに感じました。僕はS.I.C. において「手に持って見た時の感覚」を大切にしています。フィギュアって写真を撮る時は、フィギュアのバストから下の位置にカメラを構え、水平または上目づかいのように撮ると思うんです。商品パッケージに掲載されている写真なんかはそういうアングルのものが多いですよね。
だけど、手に持ったり飾ったりすると、ほとんどの場合「フィギュアより高い目線」から見ることになります。そうすると、見下ろすようになるので、足が短く見えてしまうんです。その短さは、サイズが小さくなるにつれ、ましてや極魂ぐらいのサイズになると、より顕著に感じます。そうなると格好悪いんです。だから「極魂 仮面ライダーヒビキ 」は、足を若干長めにしています。
まあ、足がスラッと長い外国人体型の方がカッコイイと思っていることもあります(笑)
デザインを決める原画イラストを描かなかった事も違いますかね。S.I.C.でヒビキを造った時のイメージを覚えているんで、頭に思い描いたもので作業にとりかかれました。
だから細かいところの造形は「S.I.C.ヒビキ」と多少違います(笑)。
■ 原型製作のこだわり
特にこだわっているのは素体です。素体ってシリーズ共通の基準となるものじゃないですか。特に平成ライダーと呼ばれるシリーズは、ボディが共通できるものも多いですし。
それぞれのライダーシリーズを共通の素体にすることで、作品別のS.I.C.としての統一感が生まれるようにしています。これがバラバラだと、作品別でS.I.C.を並べた時に気持ち悪くなるんです。
中にはどうしても同じ素体が使えないようなキャラもありますけど、そのような例外を除いては共通の素体を使えるようにします。
僕の場合、原型製作の依頼が来た時点で、シリーズ化が前提とされていない状況でも、シリーズ化に備えて共通素体を必ず造っています。やっぱりシリーズで並べた時のまとまり感とか雰囲気を大切にしたいです。
■ 今後の極魂
個人的には鬼を全部商品化したいです(笑)。
「いいですねー。」(バンダイ 泉さんが思わず答える)
S.I.C.シリーズでまだ造っていないライダーはもちろん、手ごろなサイズと価格なので、ライダーに限らず戦隊やヒーロー系のキャラクターにも向いていると思っています。
そのためには、この極魂がユーザの皆様から高い評価をしてもらわないと。
極魂でつくりたいものがいっぱいあるんですよ。
■ 安藤賢司さんからユーザーの皆様へ
第1作目の「S.I.C.極魂 仮面ライダーヒビキ」は、このサイズながら、しっかり遊べるものに仕上がっています。是非手に取ってみてください。そしていろんなポージングをしてみてください。
実はインタビューは予定の1時間越え、2時間弱というロングインタビューになりました。安藤さん、お忙しいところありがとうございました。次回は、今回掲載できなかった部分をまとめて公開します。
あまり公開されることのない、安藤氏の普段のことや興味のあることについて聞きました。
是非お楽しみに。
※1:バンダイ 泉さん
泉勝洋氏 S.I.C.シリーズの生みの親 株式会社バンダイ コレクターズ事業部所属
[[S.I.C. 極魂]] |
安藤賢司 (あんどう けんじ)
1963年生まれ/神奈川県出身
S.I.C.シリーズでは竹谷氏とともにメイン原型製作をつとめる。
フィギュアの原型製作だけでなく、アニメやゲーム等のキャラクターデザインも手がけ、多方面で活躍中。
性格:温厚