魂の骨格 NXEDGE STYLE ファントムガンダム商品化記念『クロスボーン・ガンダム ゴースト』長谷川裕一先生インタビュー
2017-06-27 15:00 更新
■「フェイスガードの展開による、ファントムの表情の変化まで再現されています」
――『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』(以下文中『ゴースト』)の主役機ファントムは、このネクスエッジスタイルが初の立体商品化となりますが、試作をご覧になっていかがですか?
長谷川:いやあ、カッコいいですね! 作者なのに、ファン目線で「これはいいな」と眺めてしまいました。迫力があり、悪そうですよね。僕の思っている巨大ロボの魅力である「実は強大な力を秘めている」と「悪そう」という要素が再現されているのもいい。そして表情の付いた開き手パーツですね。これのおかげで起動時のポーズから、Iフィールドで敵の攻撃を防いでいるポーズまでとれるので、ディスプレイするにはもってこいのアイテムだと思います。
――また、ネクスエッジスタイルは頭部が大きいアレンジデザインのため、ファントムの顔の作り込みも大変細かいですね。
長谷川:そうですね。細部の造形もですが、パーツの差し替えでフェイスガードの開閉が再現できます。ファントムはフェイスガードを閉じていると精悍なガンダム顔なのですが、フェイスオープンすると魔王的な、怒っているような表情になります。本来メカなので、そんな表情は無いはずですが、漫画のキャラクターである以上は感情を表した方がいいかな、と『機動戦士クロスボーン・ガンダム』の時から思っていました。それでフェイスガードが上下にスライドすることで、マシンの目が細くなり表情を感じられるように描いていたので、このファントムではそれを商品でも再現して頂いて大変ありがたいです。作者の狙い通り、というか(笑)。
――確かに長谷川先生が描かれるMSは、無機質なメカというよりも「キャラクター」という印象が強いです。
長谷川:そこ、実はザクが原点なんですよ。ザクはモノアイが動くおかげで目線=キャラクター性が生まれるんです。それをなんとか主役機に持ち込みたくて工夫していたんですよ。その結果が『クロスボーン・ガンダム』のフェイスガード開閉での演出でした。
――ファントムライト発動状態再現のために、クリアパーツもふんだんに使われています。
長谷川:すごいですね。これだけの量のクリアパーツが盛られているのも、かなりの迫力です。機体のグリーンとピンクの光が重なった時に生まれるであろう、玄妙な色合いも製品版では楽しみです。特にファントムは、ファントムライトを発動してこそ完成するキャラクターですから。『クロスボーン』のX字スラスターの後に、もう一回ファンを驚かせるにはどうしたらいいのだろう? と随分考えた末に生まれたのがファントムなので、初めての立体物がいい感じに仕上がって嬉しいです。
――ファントムは当初、かなりデザインに苦労なさったそうですね。
長谷川:苦労しましたね、だってカトキハジメさんの考えたX字スラスターは、ひと目で『クロスボーン』と解る素晴らしいデザインじゃないですか。でもファントムは名前が先にあり、亡霊らしいふにゃふにゃした形のものを背負わせよう、でもふにゃふにゃしたものって何だ?って(笑)。そんな感じから始まり、ようやくここまでデザインが固まりました。苦労した分、思い入れも強いですね。
■「デフォルメ=少年心と、ディテール=大人心の融合に驚かされました」
――ネクスエッジスタイルでは監修も担当されたそうですが、その際に長谷川先生が心がけたポイントがあればお聞かせ下さい。
長谷川:僕はファントムの「キャラクターとしての軸線」がぶれないようにする、という点に注意を払って監修させて頂きました。ネクスエッジスタイル独自のデフォルメや、ディテール類の変更と追加といった、商品的なカッコ良さの追求はバンダイの皆さんにお任せしてあります。あとは漫画の絵だと、立体にするには読み取りづらい部分もありますので、僕が足りない情報をフォローさせて頂きつつ立体にしていく、という感じですね。
――長谷川先生は、もとよりホビーや玩具にも造詣が深い方ですが、ネクスエッジスタイルという新しいカテゴリにはどのような印象を持たれましたか?
長谷川:僕が幼少の頃というのは、著名なデフォルメフィギュアというのはまだありませんでした。爆発的に数が増えるのは『SDガンダム』以降ですから、その頃はもう大人目線で分析しながら見ていました。子供がキャラクターの絵を描く時に頭を大きくするのは、「興味があるところを大きく描く」からで、要するにデフォルメは「少年心の遊び」だと思うんです。一方でディテールを突き詰めていくのは「大人心の遊び」じゃないですか。ネクスエッジスタイルは、そのふたつが違和感なく融合して存在している。大人のディティール感と時代に合わせたアレンジ、少年心の求めるプロポーションが、立体でひとつのフォーマットに収まる時代が来たんだな、と不思議な気持ちで眺めています。また、可動域を広くするために腰のパーツが軟質素材と聞いて、相当びっくりしています。材質の組み合わせで可動域を広げる工夫、アイデアがすごいですよね。武器も交換できて、オプションパーツもあり、これひとつで劇中のポーズはほぼ一通り対応できるのではと感心します。そして何よりも、フェイスガードの点などアレンジされつつもキャラクター性はブレ無く商品化されている。そこが監修から関われて一番嬉しい点です。
――実際に設計にあたっている方も、長谷川先生の描くロボの立体再現に非常にこだわりをもたれていて、先生の別作品である『轟世剣ダイ・ソード』(注)も参考にされているそうです。
長谷川:同じ緑のメカで(笑)。ちなみにファントムの機体色が緑なのは、色々と試した中で「緑が一番びっくりした」からです。ガンダムエース編集部に見せた時も「なんで緑?」と聞かれたんですが、その頃の誌面で色が被るガンダムも居ないし、最終的には全員一致で緑に落ち着きました。ファントムライト発動前はツノが無いので、初登場時でもそれなりにガンダムらしく見えるように、というデザインはまた難しかったですが。
注:長谷川裕一氏による学園ファンタジー作品。「神の武器」と呼ばれる人型巨大兵器が登場し、その中の一体である主役メカ「ダイソード」は緑色の体色をしている。
■「大好きな『ガンダム』の続編を描くからには、単なるコピーで終わってはいけない」
――それでは長谷川先生から商品化を望むモビルスーツを、バンダイにここでぶつけて下さい!
長谷川:それはもうファントムがいる以上、隣にクロスボーン・ガンダムは欲しいし、X-Oも……量産機のバタラ、ライバルのクァバーゼ、あるいはデスフィズあたりなら、ニーズもあるんじゃないかなと思っています。ネクスエッジスタイルに限らず、実現してほしいですね。やはり『ガンダム』は、同一のスケールとフォーマットで、敵も味方も沢山のキャラクターが居るのが魅力のひとつでしょう。おもちゃで戦闘シーンを再現したり、夢の共演を卓上で再現したりするために、ぜひ主役機だけでなく敵機、それもガンダムタイプじゃないモビルスーツも商品化されると嬉しいですね。
――ちなみに、これら敵のMSモビルスーツデザインも長谷川先生が考えられたのですか?
長谷川:はい。『クロスボーン・ガンダム』の時は原案は一通り作りました。今後も長く使う事が決まっていたバタラとラスボスのディビニダドはカトキさんがまとめて下さいましたが、あとは僕のデザインと言って差し支えないです。バタラのディティール感を活かしながら、他の機体のクリンナップをした、みたいなところはありますが。以降の作品は基本的に僕側でモビルスーツをデザインしています。メカのディテール詰めならもっと上手い方は居ると思いますが、漫画家の僕はパッと見のキャラクター性から入るので、モビルスーツのデザイン方法論が他の方と違うかもしれませんね。基本的にモノクロで、声も付かない漫画の中で、どうやってモビルスーツの魅力を見せるかと言ったら、頭のシルエットに特徴をつけたり、すごいクセの強い武器を持たせたり、そういった方向の進化をしていった結果が今に繋がっています。
――長谷川先生最初の『ガンダム』作品である、1990年の『機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス』から27年……長いですね。
長谷川:ほぼ30年ですね。もう高校生の頃に見たファースト・ガンダムから『ガンダム』にずっぷりですよ。しかしどの業界でも、最初から「30年続けよう」と思って始めることはまず無いわけです。そのつど、一生懸命にいいものを作ろうとすると、上手く連鎖してそれが繰り返し続いていく。結果論ではありますが、それはもう原点の『機動戦士ガンダム』からしてそうなのだろうと思います。ただ僕は、好きな作品の続編に関わるからにはコピーに終わってはいけない、オリジナルを作った方々と同じ位の意気込みで作ろう、という気概だけは持って作品作りに挑んで来ました。それがいい方の未来に働いたのなら、そうしてきて大変良かったと思います。時々、枠からはみ出したりしてごめんなさい(笑)。
■「『ガンダム』が次の段階に進むために生まれたのが『海賊のガンダム』だった」
長谷川:僕は自分の作品を人に説明する時、「新作でお送りする昔の漫画」と言うんです。新しく発表するけれど、フォーマットは昔の少年漫画テイスト。良くも悪くも、それが自分のオリジナリティなのでしょうね。これだけ『ガンダム』のコンテンツが増えたら、少し違うことをする奴もいないと弾みがつかないだろう、だから僕が居ても許されている、という気持ちです。
――しかし『クロスボーン・ガンダム』の頃は、まだ現在のような多種多様な『ガンダム』作品の裾野が広がっていない頃で、未知への挑戦だったのではないでしょうか。
長谷川:これは個人的な感想なのですが、1990年代前半は「『ガンダム』の枠を壊さなければ」と内圧が高まっていた時期だった気がします。1994年に宇宙世紀ではない『機動武闘伝Gガンダム』が生まれて、一方で宇宙世紀の延長線上に「海賊のガンダム」が出てきた。
それは『ガンダム』が次の段階へ進むための、必然的な出来事だったのかもと思います。
でも僕も当時、頂いた富野由悠季さんの原作を見てびっくりしたんですよ。『機動戦士ガンダムF91』の敵が「クロスボーン・バンガード」なのに「クロスボーン・ガンダム」で、この名前で来たら、僕はガンダムの額にドクロを描くしかない。でも『ガンダム』なのにそういうことしていいの?って(笑)。そういう戸惑いも最初の僕にはあったんです。だから富野監督に原作を頂かなかったら、『クロスボーン・ガンダム』は逆にこじんまりとした作品になったかもしれませんね。そこは『ガンダム』の生みの親である富野さんだからこそ、思いっきりアクセルを踏み込める強みがあり、それを僕が受け取らせて頂いたんじゃないかな。
――ちなみに現在連載中の『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』では、「クロスボーン」のスペルが変化したそうですが……
長谷川:今までが「CROSS BONE」で、現在が「CROSS BORN」です。もう海賊も限界かな、という気持ちもありますが(笑)、同じ「ボーン」でも綴りが違うと意味が違う。言葉遊び的に面白いじゃないですか。『DUST』は戦国モノだから、違う何かが交わって生まれて来る、というイメージです。
――最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。
長谷川:作品を楽しんで読んで下さって、いつも本当にありがとうございます。こうやって作中のモビルスーツが立体物になると、作品がさらに楽しめると思います。ネクスエッジスタイルのファントムも大変良い出来ですので、ぜひお手にとってご覧下さい。作者からもオススメです。漫画の方も、また皆さんが度肝を抜くような展開を頑張って考えます。目を離すととんでもないとこ行っちゃうよ、という気分で(笑)これからもよろしくお願いします。
【プロフィール】
長谷川 裕一(はせがわ ゆういち)
1961年生/千葉県出身。1983年に『魔夏の戦士』で漫画家デビューし、以来『マップス』『轟世剣ダイ・ソード』他、 SFファンタジー作品をメインに幅広いジャンルで活躍する。
『逆襲のギガンティス―機動戦士vs伝説巨神』『機動戦士クロスボーン・ガンダム』など、ガンダム関連のコミックも手がけ、現在は月刊ガンダムエースにて
『機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』を連載中。
取材協力:株式会社KADOKAWA ガンダムエース編集部
【月刊ガンダムエース 公式サイト】
ネクスエッジスタイル ROBOT魂で培われた造形や可動のノウハウを用いた、新世代のアクションフィギュア。エッジの効いたデザインとシルエットで表現する「EDGE PLUS」アレンジによりキャラクターの新たな魅力を引き出しつつ、立体としての見栄えを追求するシリーズである。 |
©創通・サンライズ
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