魂の骨格 METAL BUILD フリーダムガンダム CONCEPT 2 発売記念 福田己津央監督×重田 智さん スペシャルインタビュー
2020-08-07 16:15 更新
予約開始時に、皆様から大きな反響をいただいた「METAL BUILD フリーダムガンダム CONCEPT 2」が8月8日ついに発売となります。この発売を記念して、以前に特設サイトにて掲載した福田己津央監督×重田 智さんのスペシャル対談をフルサイズで公開させていただきます! METAL BUILDの新たなる可能性を提示する“CONCEPT 2”。福田監督、重田さんはどう見たのか? 開発担当自らインタビューしてお聞きしました。
※本取材は2020年2月に行われたものです。
■METAL BUILD フリーダムガンダム CONCEPT 2
──今回、サンプルをお持ちしましたが、お二方から見て感想はいかがでしょうか?
福田:だいぶ良い感じになっている気がします。「よくぞここまで盛った」と思いますし、開発陣が「いろいろ解釈した」のは、それこそ曲面のひとつひとつからも感じます。よくできていますよ。すごく精密。素晴らしいと思います。
重田:自分が子供の頃、「本当はこういうモノが欲しかったのかな」って思います。チープな言い方かもしれないですけど、それこそテレビの画面から出てきたみたいなすごさがありますよね。自分の子供の頃のホビーとは別物です。フォルムやプロポーション、さらにディテール、可動ギミック、すごいとしか言いようがない。ハイクラスのホビーです。
福田:足の関節はどうなってるんですか? 正座もできそうですよね。
──できます。二重関節で、曲げたときに膝の“カド”が出るようにシルエットにも気を使っています。METAL BUILD ストライクフリーダムの関節を踏まえて、CONCEPT 2でも同じ形状のものを採用しました。
重田:アニメの設定では、関節のデザインや構造まで細かく描いてなかった(笑)。肘や膝の関節ブロックを細かに気にしてデザインしてくれるデザイナーもそうはいないですし、描くアニメーターもたぶんそういないと思います。
福田:関節があんまりいい加減なのは嫌いなんだけど、あんまりリアルに人間の骨格を再現されても、それはそれで違うんですよね。
重田:METAL BUILDはメカらしい二重関節になっていますよね。関節を曲げると基本的に肘や膝は、人間は“く”の字のシルエットになりますけど、プラモデルなどでは“コ”の字のシルエットになっていることが多いですから。
福田:プラの質感も全然違いますけど、これは?
──装甲部も塗装もしています。CONCEPT 2では前回よりも少しシックで艶のない塗装としました。これは若干“兵器らしさ”からのアプローチとなっています。
重田:成型色そのままだとどうしても安っぽく見えてしまいますよね。
福田:この質感が一番いいと思いますよ。
──ありがとうございます。
福田:そもそも論で言ってしまうと、兵器として“白”はおかしいんですよね。本当だったら敵から目立たないように保護色のはずですから。
重田:アニメの主役ロボットは目立ってなんぼですからね、特に白いヤツは。
福田:RX-78-2ガンダム、アニメに登場するものは真っ白なホワイトじゃなくて、ちょっとグリーン掛かったブルーホワイトなんですよ。あの頃、サンライズのロボットの白は全部ブルーホワイト。それこそドラグナーとガンダムの白は一緒ですからね(笑)。
重田:当時のブラウン管で観ていたら区別がつかなくて……。劇場版の新作カットを観て、初めて本当に白いんだってことに気付いた感じでした。
福田:そう考えると、ガンダムの白は、こういう感じの艶のない白の方が似合ってると思いますね。でも、なんで(CONCEPT 2と、最初のフリーダムでは)盾の形状がこんなに違うんですか? 翼もだけど。
──CONCEPT 2では、重田さんからのアドバイスも反映して盾に打突兵器としてのイメージも付加しています。
福田:そう、たしかにシールドは、打突兵器でもあるんですよね。そもそもMSで殴り合いなんて絶対にできない。拳で殴ったらビーム兵器なんか握れなくなりますから、その代わりとなる近接武器。もう下手な剣よりも盾の方が強いです。だって機動隊の盾だってすごいじゃないですか、破壊力(笑)。
――CONCEPT 2での重田さんの監修についてお聞かせください。
重田:立体物の監修の方法って、監修する人それぞれなんですよ。じっくりコンセプトワークから始める人もいれば、できあがってきた試作品などでのチェックをする人もいる。前回のMETAL BUILDフリーダムガンダムの時は、「アニメーションで作画表現された機体を表現する」というコンセプトだったので、その部分でのお話しできる事はあるのかなと思ってお受けしました。「こう見えたらいい」、「こう思って作画している」、あとは「設定でのデザインはこうだけど、こういう処理にした方が作画上で画面映えした」というようなアドバイスをさせてもらいました。ただ、今回のように「METAL BUILDでフリーダムをあらためてもう一度作ります」って言われても、話せることは前回とほとんど同じなんですよね(笑)。
――当初、CONCEPT 2の企画についてご相談した際、「自分が監修すると前と一緒になってしまいますよ?」ともおっしゃっていただきましたよね。
重田:自分としては今回のCONCEPT 2に対して、何か明確な“回答”があったかと言えば、そうではなくて。それこそデスティニーガンダム、ストライクフリーダムガンダムとMETAL BUILDが進化する中、フリーダムガンダムも見劣りしないようにしたいくらいで。なので、今回は開発チームから提案していただいた方向性やアイデアに対してのリアクションを伝えるくらいでした。
──重田さんには、バラエーナプラズマ収束ビーム砲についてアドバイスいただきました。
重田:制作当時、最初にフリーダムのデザインを見たときに、ウイングとウイングの間にビーム砲が収納されているのを見て、コレはかなり斬新な!とか思いましたね。ウイングを閉じている時にはビーム砲自体があまり目立たないように、逆に展開時はしっかりと主張があるようにとお願いしました。あとはウイングを展開した時、ビーム砲やウイングがシルエットとしてなるべく重く見えないようなイメージで、ともお願いしました。
――開発当初、プロポーションはもう少しマッシブでしたが、重田さんにヒアリングさせていただく中で、現在のシャープな姿にたどり着きました。
重田:デスティニーやストライクフリーダムと同じディティールを盛っていく路線で進んでしまうと、フリーダムが本来持っているシンプルな良さみたいなものが死んでしまう気がしたんです。それこそストライクフリーダムとの差別化も必要ですし。本来、シンプルなフリーダムがいて、その先にパワーアップしたストライクフリーダムの存在があるので、住み分けはキチっとしていたほうがいいと思いました。でも、それをどう立体としてアレンジして表現するのかは、自分としては明確な方向性とかアイデアはなかったんですけどね(笑)。
福田:正直、今回の方がやはりプロポーションがいいですよ。正直、「もうこれ以上はねぇだろう?」と思うようなところまで行っても、次々と超えてくる感じですよね。
■フリーダムガンダム誕生秘話
──フリーダムガンダムと言えば、第35話「舞い降りる剣」の登場シーンが印象的でした。あのシーンはどのように生まれたのでしょうか?
福田:あれは最初から考えていたのが『暴れん坊将軍』だからね。
――そうなんですか!?
福田:シナリオ会議で、「どういう登場をするんですか?」って話になって。「雪原にオーロラの煌めく天空から、さーっと降りてくる」と。
重田:福田さんはイメージ先行型ですよね。
福田:そうそう。で、「強さの表現として、全方位に一斉にビームを撃つんですよ」って話したら、「それじゃ面白くないです」って言われてしまって。「じゃあ、一斉にビームを撃ったら、それがみんな峰打ちになってるんです!」と提案したら、スタッフも納得してくれました。
──不殺のキラですね。
福田:単純に、最初から一発で全滅させたら面白くないですからね。
重田:正直な話、「フリーダムガンダムって、主役ロボットのカッコ良さの表現としてはなんてコスパがいい機体なんだろう」って思いますよね。ウイングを拡げてバーンとポーズをとっているだけで、何年経ってももカッコイイって言ってもらえて。他の主役ロボットはもっとカロリーを使った作画シーンで、頑張った見せ方をしないとカッコイイって言って貰えないことがよくあるのになとか思います。やっぱりシチュエーションが良いんですよね。
──ピンチのシーンでアークエンジェルの前に颯爽と登場するのもかっこよかったです。
福田:これも要するに翼を展開しているフリーダムだから、雲を割って、オーロラの下で浮かんでいる姿で、天使っぽいイメージからスタートして。で、「オーロラってどこだ?」って言われて、「じゃあ、北だ!」と舞台が決まっていく。
重田:天候がピーカンだったりすると、画面の緊張感がなかなか出せなくてさまにならないです。
福田:SEEDの時は舞台をすごく考えました。場所も空も全部変えているんですよ。天候も晴れ、曇り、嵐。夜、昼、夕方と使い分けてる。
重田:インパルスとフリーダムの戦闘シーンは雪で。グレーの曇天にしましたよね。
福田:あれはゲームを意識して。そもそも戦いなんて、ビーム使って、剣で戦うしかないから、どれも同じになるんですよ。だから、同じ場所で戦うのはダメですよね。
重田:逆にシチュエーションを変えれば(笑)。極論すれば、何でもありなのかなと。
福田:そうそう。舞台を変えるだけで大分印象が違います。
重田:シチュエーションは大事ってやつですよね。
福田:ドラマチックにするんだったら雨と雷! で、これは登場だからオーロラが欲しかった。
重田:そうやってイメージ先行で決めていくと、特殊設定の森田繁さんが「どうしたらいいんだ」って悩んでいたそうで。時間が合わないとか、場所が合わないとか、大変だったらしいです(笑)。
福田:アラスカに雪原はないとか(笑)。シナリオ上の整合性はどこにあるんだって。ただ。当時、SEEDはガンプラが欲しくなるには、どうすればいいかを考えていて。その中でジオラマが作れるような絵になる戦闘をしようというのがあったんです。
重田:例えばファーストガンダム(TVシリーズ第1作「機動戦士ガンダム」)であれば、シャアの赤いズゴックがジムをクローで刺しているようなシーンですね。
福田:そうそう。シーンを作る、ポーズを作る意味で、シチュエーションを作る。そこを第一に考えていたので、結局、舞台が大事になるんですよ。そこの背景に何を置くか。まずどこに行くかを決めて、誰とどういう風に戦うのかっていうのを決めて、最後にデザイン。で、そういう大切なシーンは全部あなたに描かせた(笑)。
重田:アニメーターとしては、その前後の動いているカットこそがアニメの醍醐味で見せどころなんですけどね。でも、やっぱり視聴者の印象に残るのは止め絵です。だって見せたいところで、止めてじっくり見せちゃうわけだから。
──ではフリーダムガンダムの誕生の経緯についてお聞かせください。
福田:フリーダムガンダムは、シナリオ会議でネーミング段階から大反対されたんですよ。賛成したのはシリーズ構成の両澤千晶だけ。
重田:もうちょっとね、それっぽいひねった名前がよかったんですよ。どんな意味のネーミングなんだろうって思えるような。
福田:いいじゃん、自由(フリーダム)と正義(ジャスティス)って! 当時、イラク戦争もあって、兵器に“自由”とかネーミングするのは、僕らの感覚では嘘くさいけど、現実を見ると、言葉の本質とは間逆の名前であるほうがリアルにあると思ったんですよ。
重田:まぁ、ペットネームとしての兵器の名前はあとから誰かがつけますからね。
福田:逆に兵器に“デストロイ”なんてのも、相手をビビらせる、という意図があったり。作為を感じる名前にするよね、愛国者(パトリオット)とか。
重田:国の威信を背負っていたりするという。
福田:そもそもファーストガンダムの初期企画『フリーダムファイター』からもきていて。なんか“ダム”が並んで面白いって(笑)。
重田:韻を踏む感じですか(笑)。
――設定についてはいかがですか?
福田:最初から、途中から出るパワーアップ機体を核動力のMSにしようと思っていて。「その前段としてのバッテリー駆動だと。不便さがシチュエーションを作りやすいし、エネルギー切れとか簡単に起こる。でもそんなに強くないじゃん」とか思ってた(笑)。フリーダムガンダムはSEEDの世界では“最強の機体”としての位置づけ。
――デザインについてはいかがでしょうか?
福田:最初、大河原邦男さんに「ストライクガンダムのストライカーシステム、エール、ソード、ランチャーと3つの機能をひとつに合わせたMSを作ってください」と発注していました。でも、当時は上手くいかなかった。スタッフも色々考えて、大河原さんも考えてくれたんだけど、デザインとしてまとまらなくて。シャープな機体にならなかったんですよ。ただ、のちに『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』で、もう一度、機能を集約するコンセプトでやりましょうとなって、デスティニーガンダムになるんですけど。
重田:結局、フリーダムガンダムはストライカーシステムの機能の集約ではなくなったんですよね。
福田:みんなで悩んでいたとき、大河原さんの方から提示があったんです。「翼をメインにしたデザインはどう?」と提案いただいて。
重田:まさかウイングとウイングの間にビーム砲が入っているとは思わなかったです。バラエーナプラズマ収束ビーム砲の格納アイデアには驚かされました。
福田:その辺、大河原さんはギミックをちゃんと考えるから。さすがですよ。
重田:なるべく単純な構造でシルエットが大きく変わるように、と大河原さんも考えていましたよね。シルエットとしての変化は、アニメの演出として、ハッキリと見て変わったことがわかるのですごく意味があるんですよ。
■ユーザーに向けて
──今後、METAL BUILDで商品化したらいいと思うメカはありますか?
福田:デンドロビウム作ってくださいよ。誰が買って、どう飾るのかすっごく興味ある(笑)。
重田:以前ガンプラ化された時、1/144スケールで2メートルくらいあったりしませんでしたか?(編注:約1メートル)
福田:でも、等身大のガンダムだって、サンライズに飾ってるし。サンライズに飾ればいいんだよ(笑)。
――デンドロビウムですか? 大きさもですが、ダイキャストを使うので、重さもすごいことになりそうです。
福田:そうは言ってもデンドロビウムがうちに送られてきたらどうしよう……。「困ります!」って引き取りを断る(笑)?
──重田さんはいかがですか?
重田:今、思いついたのはストライカーパックが3つラインナップされるなら、それを運ぶメカも必要なんじゃないかなと。
──スカイグラスパーですか?
重田:おもちゃ的に遊ぶのであれば、これはアリなんじゃないですか。ストライカーパックや武器単体としてディスプレイするのもいいですけど、やはりグラスパーとの合体装備はかなりいいと思います。大河原さんのデザインの思い切りのすごいところ、「ここに旋回砲塔か」みたいなスカイグラスパーのデザインにも超びっくりですし(笑)。
福田:大河原さんに発注する際、「Gファイターでいいです!」って言ったの。むしろ「Gファイターにしてください、合体しなくてもいいです」って。
重田:あのストライカーシステムの運用の不便さがストライクガンダムっぽいんだと思いますよ。あとはやはり主役ということでインパルスガンダム……は難しいのかな。
──開発チームとしては、ぜひ商品化したい機体でもあります。
重田:それにしても、なぜあんなに劇中でキャラクターが立たなかったんですかね? かなり苦労して描いたのに……。
福田:インパルス?
重田:ソードインパルスやブラストインパルスのBANKシーンを作るのがそれは大変で、特にソードを連結して振り回すのが超大変作画だったんですよ! なのに、なぜ人気が出ないんだとか思って(笑)。
福田:物語上、スポットの当たり方が弱かったから。
重田:あとはインパルスにはストライクみたいな不便さがないからですかね。でもあのいろいろなギミックがロボットアニメの主役ロボっぽくて良かったかなと思うんだけどなぁ。上半身と下半身パーツ、シルエット装備が飛んできて空中合体するなんて。
──では、最後にSEEDファン、およびMETAL BUILDファンへのメッセージをお願いします。
福田:今も商品化が続くことはいいことですし、本当にありがたいですね。それこそ20年間で進化していますから。当時、商品化しきれなかったことが、今こうして実現しているのはすごいことです。
重田:作り続けているからこそですよね。
福田:今、見ると古いものは成型とか新しいものと比べると格段に劣ってたり。でも、そこが逆に良い、みたいなところもありますし。商品だけでも、それこそ歴史ができていますからね。
――重田さんからはいかがですか?
重田:今回のCONCEPT 2は前回のフリーダムからの伸び代、成長の具合を比べてもらいたいですかね。初代のフリーダムガンダム自体を否定するわけではなくて、良し悪しでもなくて、“世界観”を比べて楽しんでもらうこともできると思います。個人的にも、自分の描いた絵に似てる、似てないとかではなく、立体物としてカッコよさや、精度が格段に上がっていくのは、傍で見ていても驚かされるものがあります。
福田:比べるとシルエットの違いもわかりますよね。
重田:それこそデスティニーやストライクフリーダムと比べてもらうのもいいですし。やはりシリーズが長く続けば続くほど、“物”はよくなっていくという証明でもあるんですけど(笑)。手にしたユーザーさんには、CONCEPT 2を存分に味わってもらってもらいたいですね。
――ありがとうございました。
皆様、インタビューいかがだったでしょうか? 皆様、ぜひ“CONCEPT 2”を手にとって、福田監督、重田さんにも感じていただいたMETAL BUILDの進化を体感していただければと思っております。また、福田監督、重田さんからお話しいただいた「商品化してほしいMETAL BUILD」が今後実現するのか? ぜひこのあたりもご期待ください。
METAL BUILD
フリーダムガンダム CONCEPT2
発売日:2020年8月予定
メーカー希望小売価格:26,400円(税10%込)
商品詳細ページはこちら
METAL BUILD さまざまなクリエイターの手を介し、『超合金の良さ』と『作品に応じたデザインアレンジ』が融合した究極の完成品トイブランドです。リアルロボットをモチーフにするため表面的な合金使用は抑えられつつ、敢えて金属のまま露出させるようなデザインアレンジ、可動性のための造形アレンジ、重さを感じる設計など随所に超合金シリーズのノウハウが活きています。 |
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