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■唯一無二の存在。《始まりの男》、本郷猛

仮面ライダー・本郷猛は改造人間である――往年の『仮面ライダー』ファンならば誰もが耳なじんでいるであろうオープニングナレーションの一節である。ナレーター・中江真司による理知的かつクールな語り口調とあいまって、〈仮面ライダー=本郷猛〉の図式をいやが上にも観る者の脳裏にインプットしていった名惹句だ。途中、不慮の事故にともなう一時降板があったにせよ、やはり主演・藤岡弘、扮する本郷猛が「始まりの男」という称号を冠せられる唯一無二の存在であることに疑いの余地はない。

 今日、それを痛感させるレジェンド級の存在感を放つ本郷猛だが、その人気を不動のものとしたのは、やはり第53話以降の“新1号編”といえるだろう。藤岡の後任として主役を張っていた佐々木剛演じる仮面ライダー2号・一文字隼人に代わって、欧州より帰還した仮面ライダー1号・本郷猛が、再び祖国日本の護りに就いたのである。
 当時の東映プロデューサーとして試写に臨んだ平山亨はこう述懐していた。「ついに藤岡くんの本格復帰がかなった! その雄姿を目の当たりにした僕は、人目もはばからず感涙にむせいでしまった」と。それほどまでに本郷猛のカムバックは、スタッフやファン、『仮面ライダー』を愛する人々すべての心からの願いだったのである。

 そして艱難辛苦のリハビリテーションを自らに課し、医師さえ舌を巻くほどの驚異的な治癒力をもって番組へのスピード復帰を果たした藤岡弘、演じるところの本郷猛。自身の運命に懊悩し、どこかひ弱さを漂わせていた“旧1号”時代とは打って変わって、復帰後の本郷はヒーローとしてのたくましさ、力強さを極限まで発揮していった。それはあたかも、俳優生命の崖っぷちを乗り越えた藤岡自身の胆力を表すかのごとく……。

 かくして、比類なき勇猛さを湛えて“帰ってきた本郷猛”の姿に、ファンたちは拍手喝采。それを裏付けるかのように、1972年6月、当時の所属事務所が主宰した「藤岡弘後援会」には、子どもたちを中心に最大6万人もの会員登録が殺到したという。加えて、藤岡自身のメッセージが聞けるテレホンサービスを開始したとたん、旧電電公社の電話回線がパンクしたという逸話さえ残されている。

 当然そうした藤岡の俳優人気を、よそが指をくわえて見ているはずもない。他局からの猛烈なドラマ出演オファーが、徐々に『仮面ライダー』に専心できる藤岡の貴重な時間を割いていった。特に「ゲルショッカー編」突入に前後するシリーズ後半、“本郷猛、生死不明?”というシチュエーションで藤岡の出演シーンが削減されていったのも、彼のスケジュールを慮る『仮面ライダー』製作サイドの苦肉の選択だったのである。

 しかし、そこで過去の経験則に通じた生粋の仮面ライダー1号・本郷猛ファンは思う。〈藤岡の出演シーンの多寡は問題ではない。ただ、彼が本郷猛で在り続けてくれればそれでいいのだ〉と。頼もしきヒーロー像を体現しながらも、どこか儚げな存在性を漂わせ続けた本郷猛。結果論ながら、そんな硬軟あいまみえる奥深いキャラクター性にこそ、今日まで熱く語り継がれる〈Mr.仮面ライダー〉の真の姿が隠されていたのかもしれない。

執筆・原型アドバイザー:高橋和光(タルカス)

S.H.Figuarts
本郷猛
メーカー希望小売価格:6,264円(税8%込)
2017年12月発売予定

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※2017年8月1日(火)一般販売店様にて予約解禁
(予約取扱の有無は販売店様により異なります)

S.H.Figuarts(真骨彫製法)仮面ライダー新1号

© 石森プロ・東映