魂の骨格 ROBOT魂 タチコマシリーズ商品化記念『攻殻機動隊 SAC_2045』神山監督・荒牧監督スペシャルインタビュー
2020-08-17 12:00 更新
魂ネイションズにまつわる作品の送り手にクローズアップする「魂の骨格」。今回はNetflixオリジナルアニメシリーズ『攻殻機動隊 SAC_2045』を手掛ける神山監督・荒牧監督のダブル監督にインタビュー!
攻殻シリーズ最新作となる同作は現在Netflixにてシーズン1が絶賛配信中。そして、8月22日には「ROBOT魂 <SIDE GHOST> タチコマ-攻殻機動隊 SAC_2045-」が発売、さらに12月には「ROBOT魂 <SIDE GHOST> タチコマ-攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG&SAC_2045-」が発売予定だ。
そこで両監督にROBOT魂 タチコマシリーズを手にしてもらいつつ、タチコマ、そして攻殻シリーズについて語ってもらった。
■ROBOT魂タチコマ
――8月22日発売の「ROBOT魂 <SIDE GHOST> タチコマ-攻殻機動隊 SAC_2045-」、12月発売予定の「ROBOT魂 <SIDE GHOST> タチコマ-攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG&SAC_2045-」の実物はいかがでしょうか?
神山:すごい再現度高いですね。
荒牧:ね!
神山:サイズもいい感じで、可動させて遊ぶのにいいですよ。
荒牧:ちょうど手のひらサイズですよね。
神山:手頃な感じです。再現度は本当に非の打ち所がないみたいですよね。
――劇中の3DCGと比べていかがですか?
荒牧:3DCGの一番つまんないところは実物に触れられないことなんですよ。
神山:ですよね。あるのに触れない。
荒牧:そうそうそう。それがやっぱりこうやって触って……というのは商品になってこその醍醐味ですよ。手応え感、質感、重さとか。可動させたときの“関節の硬さ”も、やっぱり気持ちいいですね。
――(「ROBOT魂タチコマ-攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG&SAC_2045-」を示しながら)今回、オプションパーツにもこだわってみたのですが、いかがでしょうか?
荒牧:これはエフェクトパーツですよね?
――グレネードランチャーのエフェクトですね。
荒牧:3DCGで作ったものがアナログで返ってきてる(笑)。これはガトリングガン用のエフェクトですか?
――はい。あとは右手のチェーンガンにも挿せます。
神山:なるほど、しかもワイヤーも付いてるんですね。こうやって形を変えることもできたり。そういえば発射時、物理的に波状になることってある?
荒牧:出た瞬間だけ液体で、空気に触れた瞬間に硬化するから、ならないこともないかも?
神山:こうやって見るとガトリングガンって、すごくデカイ。一発当たっただけでも人がちぎれる!
荒牧:ちぎれますね。バフっとしますね。
――SAC_2045版には素子とバトーのキャラクタープレートが、S.A.C. 2nd GIG版には電脳通信を再現したプレートが付属します。
神山:あ、なるほど! ちゃんと電脳通信風にキャラクターが見えるんですね。自分の眼鏡とかに貼りつけて見ると、9課になったような気持ちになれる(笑)。
――電脳通信プレートでは、2nd GIG最終回のカウントダウンも再現しています。
荒牧:核ミサイル発射前のヤツですね。
神山:(バトーと素子の全身プレートの)キャラクターの対比は、これで合ってるんですか?
――若干の誤差はあるかもしれませんが、設定的には合わせています。
荒牧:だいたい合ってるのかな? うん、これはかわいいですね。
■“攻殻”におけるタチコマ
――“攻殻”におけるタチコマについてお聞かせください。
神山:S.A.C.シリーズ立ち上げ時、テレビアニメでタチコマを出すのは難しいだろうと言われていて。でも、私としては、作品の“意味性”として、難しかろうがタチコマは出さなければいけないと思っていました。当時、AIに対する捉え方が今よりちょっと漠然としていて、それこそ人類にとって新しい敵になる存在とも考えられていました。
――原作ではAIの可能性として“人形使い”のエピソードがありますよね。
神山:人形使いは対峙する相手で、敵ではなかったんですよ。コンピューターやネットワークが進化してデータが蓄積され、人間を模して精密になればなるほど、もしかしたら生命を宿すんじゃないかという話でした。AIそのものの考え方というより、「生命とは何ぞや」というテーマなんです。原作では、素子たちは、もしかしたら脳がなくなったとしてもアイデンティティ、ある意味、魂としてゴーストが残るのではないかという可能性を探っていました。それは映画版でも追求していましたが、そのテーマと対を成す存在がタチコマだと思ったんです。
――もうちょっと詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?
神山:当時よく「不気味の谷」と言われていましたが、人間にそっくりだけど、微妙に違うものは気持ちが悪かったり、恐怖の対象になる。どんなに美しい人形でも人間に模していけば、模していくほど不気味になる。でも、タチコマはあの丸っこいかわいらしい形をしていることで、逆に人間から愛されるし、人間的なことをすればするほど逆に不思議がられる。人間に似ていると、人間以上のことができないとたぶん褒めてもらえない(笑)。タチコマは私の考えるAIの進化、身体性能……ゴーストと身体が不可分なのか、そうではないのかなどを表現していくキャラクター。また“人形使い”などとは対をなす存在で、作品にとってある種のアイコンですよね。AIには人間的心理を持っていないからこそ獲得できるものがあって、でも、それとはまた別のものがあるんじゃないのかなと思ったのがタチコマでした。
――荒牧監督にとってのタチコマはいかがですか?
荒牧:押井守監督の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』ではタチコマを出さなかったじゃないですか。当時はフチコマかな。それが衝撃的で。それでもちゃんとでも成立してた映画だったんで、それはそれですごいなと思ったんですけど。
神山:作画で四本足を動かすのは多脚戦車で精一杯だったからなんでしょうけどね。
荒牧:でも、原作ファンとしては「出さないとダメでしょ!」って思っていて。やっぱり劇中に登場すれば、すごく魅力的なメカですよね。それこそ『S.A.C.』では特に、ファーストシーズンの後半、ラボに戻されるエピソード、そこから最終回の活躍とか、泣かせる展開になったじゃないですか? あの最終回が一番好きなんです。
神山:あの最終回は最初から仕込んでいたんですよ。みんな(タチコマを)ただのペットロボットだと思っていたところを、それが実は物語のメインストリーム、全話を通して体現している正体だったことが最終回にわかる構成。それを気付かれないように盛り込んで、これを観た皆さんからどんな反響がくるのか、すごく楽しみにしていました。タチコマはそれだけ強い個性を持ったキャラクターであるし、ヒロインなんですよ。素子以上にヒロイン。『攻殻機動隊 SAC_2045』では新たなタチコマが登場しますが、こうも馴染み深いキャラクターになってしまって。まあ、「一回死んだのに、何ごともなく帰ってくるのかよ?」っていうのも、ある種アニメのお約束ですよね。「帰ってきちゃってすみません」みたいな(笑)。
■攻殻機動隊 SAC_2045
――『攻殻機動隊 SAC_2045』の新タチコマについてお聞かせください。
神山:S.A.C.シリーズで感じていた兵器としての不自由さから、「多脚戦車のかっこよさをもっとフルで見せていこうよ」というのが今回のタチコマですね。いろいろとチューニングして、前作以上にアクションをやれるようなデザインになっています。
荒牧:今回は“どう描くべき”はすごく悩みましたよね。もっとガラっと変えようかみたいなこともあったんですけど、やっぱりタチコマは攻殻のアイコンなんで。最初のコンセプトでは、小さくていろんなところに行けるところにしようと相談しました。フル3DCG作品なので、作画のようなサイズ的な嘘をつく演出は難しいですからね。
神山:うん。漫画版では、フチコマでマンホールに入っていくんですけど。
荒牧:漫画だったらやれちゃうんだよね。
神山:まあ、あり得ないんですけどね(笑)。ただ、作画でもギリギリごまかせるんですけど、3DCGは本当にそこがごまかせない。実写以上に、嘘がつけないんですよ。
荒牧:これでもかなり小さくしたんだけど、やっぱり人が生活している場所のドアを出入りするのは、ちょっと物理的には無理なんですよね。それでもむりくり出入りするシーンはあるんですけど。でも、できるだけ嘘をつかないように、人が乗り込める最小サイズまで小さくしました。
――その中で、新タチコマだけなく、ROBOT魂では「S.A.C.2nd GIG&SAC_2045」版として商品化予定の前シリーズのタチコマも登場していますよね。
荒牧:旧型はどうしようかと思ったんですけど、「やっぱり出さないとね」となって。やはり作品的にも出した方が「美味しいな」って。皆さんからの反響もよかったですからね。
――フル3DCGアニメ『ULTRAMAN』からダブル監督としてコンビを組まれていますが、お互いの印象はいかがですか?
神山:ふたりで(監督を)やるのは難しいとは言われますけどね。
荒牧:そうそうそう。
神山:荒牧監督だからだと思いますけど、すごく仕事しやすいです。
荒牧:微妙な押し引きとかも含めて、その辺も楽しめるかなと最初から踏んでいたんですけどね。
神山:一緒に仕事をして、丸3年経ちますから。
荒牧:すごい相性が良いってわけではないと思うんですけど(笑)。神山監督とは物作りの方向性、仕事に対する向いている方向が上手く合わせてこれたかなと思っています。
――ダブル監督だと、しっかりした作業分担があるのでしょうか?
神山:ほぼ分業はないんですよ。
荒牧:基本的にはいつも一緒にいて一緒に見る。そこで何か食い違った時にはその場でできる修正をする作業です。ただ、神山監督にはシリーズ構成、脚本はリードしてまとめ役をしてもらっています。その後の絵コンテは一緒にやっていますが、神山監督はシナリオで忙しいので、私が絵コンテをチェックする感じですね。日中は一緒にいるので、宿題として持って帰る部分が、ちょっと違う感じでしょうか。
――『攻殻機動隊 SAC_2045』はシリーズ初となるフル3DCG作品ですが、このあたりについてはいかがでしょうか?
神山:作画と3Dだと、そもそも映像がもっている意味性が全然違うなと思っていて。感覚でいくとアニメ、3DCG、実写があって、ここ3年間フル3DCG作品をやってみて思うのは、今はもう実写の向こう側にありますね。だから実写以上に嘘がつきづらい、見えてマズイものが見えやすいのが3DCG。なので、作画の時は作画だからこそできる方法を探っていて。それこそ当時、「S.A.Cシリーズは実写っぽい」と言われたけど、アニメならではのやり方で作っていたんですよね。実は作画の方が情報量は少なくて、台詞、音楽、SE、そういったもので情報量を増やしていました。逆に3DCGだと台詞が入らないんですよ。単純に脚本で言うと、『S.A.C.』は平均して1話あたり21ページ。たぶん『2045』は平均すると17ページくらいしかない。
荒牧:20ページになると、台詞が入らないですよね。
神山:やっぱりスピードが絶対的に遅いんだと思いますね。所作が入る分。
荒牧:モーションキャプチャで実際にお芝居していますからね。
神山:うーん、作画のように省略できる部分が少ない感じ。
荒牧:まあ、記号化されてないってことですかね。
神山:単純に、物理運動は現実そのものですからね。スピードだけで言えば、モーションキャプチャーの台詞、役者さんの台詞の方が早いですし。だけど、所作が入る分、そこに時間がたぶんとられるんだと思いますね。で、その所作の部分を切ってしまうと動きにならない。今回フル3DCGで攻殻機動隊を作るという初めての試みが、世間にどう受け入れられていくか、楽しみでもあり、それこそチャレンジした部分でもあって。
荒牧:3Dになったからこそ、生身のアクションみたいな、作画のアニメとは違ったことができています。それこそアニメの絵だけど“生身の人”が入っている感じがあって、ストーリーに、良い意味での生々しさみたいなのが出てくるといいなあと思っています。
神山:内容に関しては、このシリーズから観た人も楽しめるものを意識しています。それこそコンテキスト、作品の背景を知っている前提の作り方をしていた前シリーズに比べれば、予備知識なしでも観られるくらいの間口の広さはもたせています。
■シーズン2への期待
――荒牧監督はインタビュー中、(ROBOT魂を)ずっと手にされていますよね(笑)。
荒牧:元々おもちゃ業界の仕事をしていたので、立体は気になっちゃうんですよ(笑)。可動機構が随所に盛り込まれていて、想像以上にいろんなポーズが取れるので面白いですね。「(劇中で)こんなポーズも取らせてみればよかったかも」とあらためて思ってしまいます。これをアニメーターに渡したいです。まだ間に合うかな?
神山:今、みんな忙しいから実際は難しいんだろうけど、日がな一日こういうので遊んでると、こだわりというか美意識が湧いてくるはずですよね。こういう風に動かすといいみたいな。
荒牧:かわいいポーズとかね。こうした方がかっこいいか、イメージがわいてきますよね。今は完成品でこれだけ遊べるものが手に入るわけだから、手軽に触れますよね。みんな大事にして、遊び用と保存用みたいになったりしているみたいですけどね。
――おふたりはフィギュアなどコレクションするのでしょうか?
神山:最近はコレクションまではいかないですね。でも、いただいたらやっぱり触ってみますけどね。
荒牧:コレクターには絶対ならないように……と気をつけているんですけどね。関連商品はいただけるので大事にしますし、そのついでにいろいろもらっちゃったりもします。すでにいっぱいあって、(家族からは)「なんとかしろ」とよく言われるんですけど。捨てられないですよね。それこそタチコマなんて、愛着が湧くから手放せない。毎回、思いますが、商品化って嬉しいなって(笑)。ROBOT魂のタチコマ、今後、カラーバリエーションは出ないんですか? 黄色とかグリーンとか。
神山:別バージョンというわけじゃないんだけど、ストーリー上、いろんなカラーが(笑)。
荒牧:工事現場のとかね。
――では、最後になりますが、『攻殻機動隊 SAC_2045』の今後、シーズン2についてお聞かせください。
神山:シーズン1では、いろいろ広げるだけ広げていますので、本当に(物語が)畳まれるのか楽しみにしていただきたいと(笑)。
荒牧:間違いなく畳もうとする努力は今していますので。そこだけは言えるかなと。
――実際、シーズン2で畳まれるのでしょうか? それともまだまだ続く可能性も?
神山:秘密ですね。
――そこも含めてシーズン2に期待ということで。
神山:はい、ぜひシーズン2をお待ちください。
荒牧:ROBOT魂タチコマを触りながら待っていてください。
――本日はありがとうございました。
神山健治(かみやま・けんじ)
アニメーション監督、脚本家、演出家。株式会社クラフター代表取締役共同CEO。
パトレイバーシリーズの『ミニパト』にて監督デビュー。代表作『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズ、『東のエデン』、『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』、etc。荒牧監督とは『ULTRAMAN』でも共同監督を務める。
荒牧伸志(あらまき・しんじ)
アニメーション監督、メカニックデザイナー。株式会社SOLA DIGITAL ARTSのCCO。
日本における3DCGアニメーションの第一人者であり、神山監督とは『ULTRAMAN』でも共同監督を務める。代表作『APPLESEED』、『スターシップ・トゥルーパーズ レッドプラネット』、etc。アートミック出身。『機甲創世記モスピーダ』のライドアーマー、『メガゾーン23』のガーランドなどのデザインを手掛けている。
長年「TAMASHII NATIONS」が蓄積してきた技術と、ロボットを愛する心=“ロボット魂”が創りだしたハイターゲット向けロボットフィギュア。最先端のCAD技術+造形職人の匠の技が織りなす“造形の妙”で、数々のロボットを圧倒的な完成度で立体化する。 |
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
©士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会
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