マクロス30周年を記念して河森正治氏によって新たに生み出されたVFが、DX超合金でついに立体化!
完全新規の変形シークエンスによって、可動と変形手順が劇的に変化。特徴的なミサイルコンテナは全36門の
ミサイルハッチの開閉が可能。この新型バルキリーの誕生秘話、そしてDX超合金としての魅力について、
河森監督自身のコメントとあわせてじっくりご確認いただきたい。
河森正治
1982年の初代VF-1バルキリーから始まり、幾多の発展機や後継機をデザインしてきた河森氏。
今回は本商品の発売を前に河森氏のインタビューを掲載し、氏自身が語るデザインのポイントや、
実際に商品に触れた感想などを語っていただいた。
バジュラ戦役後の西暦2060年に完成した、民間軍事プロバイダー「S.M.S」の惑星ウロボロス支社独自開発による ヴァリアブル・ファイター試験機。「YF-24 エヴォリューション」以降の系譜に連なるが、機体構造はほぼ完全に新規設計であり、 ファイター形態時に腕部が脚部の外側にレイアウトされている点や、大型のマルチコンテナを装備する点が外観上も わかりやすい特徴となっている。 (作中設定より)
DX超合金ではVF-25、27、YF-29と続けて変形を考えてきましたが、自
分はそれほど複雑な変形を考えたつもりはなかったんです。
ブロック玩具で試作を作った時は「今回は随分と簡単に出来た!」な
んて思ったのですが、いざ超合金トイを作るとなると予想以上に大変
な作業になったんですよ(笑)。そんな経緯もあって今回はストレスなく遊べる変形機構を目標にしました。
それならば変形機構を単純化する事も出来るのですが、作業を進める内に「それで良いのか?」と思ったんです。
バルキリーの開発ナンバーには僕なりのポリシーがあるんですよ。VF-25と27の様な派生型は別としても、新規に30のナンバーを付ける以上は変形機構を完全に一新したかった。そこでVF-1とは根本から違った変形を模索しました。
とは言え単に折り畳み方を変えただけではダメです。
各機構に意味を持たせないとデザインとは言えないので、これまで
同様に変形のための変形機構は避けています。ただし上腕を隠す
ためのカバーはわざと付けたんですよ。
従来ならこのパーツ自体を上腕にするのですが、今回は着陸脚の
カバーやウェポンベイのカバーの様な「雰囲気」を狙っています。
パカッと開く気持ちよさの演出ですね。
最初のVF-1をデザインした時は両腕の収納位置に悩みました。そしてF-14のプラモデルを 眺めていたら2つのエンジンの間が広く空いている事に気付き、ここに両腕を畳んで収納する 事を思い付いたんです。それがVF-1を考えた時の一番のブレイクスルーでした。以降、 SV-51やYF-21など特別な機体を除いては、バルキリーは基本的に両腕を両脚の内側に畳ん できました。ただ、これによって肩ブロックを外側に引き出す手順が必要になり、肩の可動域 と商品化した時のホールド性を両立する事が難しくなったんですよ。そこで今回は思い切って 肩を外側に出しました。その決意に至るまではけっこう悩んでいます。 ただ、そうなると本体部がどうしても幅広くなるので、その広さを見せないための工夫を考え ました。ここで着目したのは実在の戦闘機にある主翼付け根の「膨らみ」で、その膨らみに見 える様に腕を緩やかなラインに曲げて収納しています。だまし絵的な工夫ですね。
こうした事で腕自体はかなり細くなってしまうので、主翼をシールド状に畳んでボリュームアップをしました。また、この部分には主翼に武器を取り付けるパイロンがあって、搭載した
武器がバトロイドではそのまま両腕で構えられるんですよ。
これなら主翼下面の一部を畳む理由にもなりますからね。
YF-30の変形機構に確信が持てたのは、この両腕の収納位置が決まった時でした。
肩ブロックも従来よりも薄いパーツにしたので、バトロイド時はカナード翼を重ねて華奢に 見えない様にしました。肩ブロック自体はカナードとは別に動くので可動域はかなり広いです。 また腕を上げた際の肩ブロックの形の変化にも注目してください。
VF-1最大の反省点は手首を引き込み式にした事でした。メカにがらんどうな部分を入れてし まったわけですからね。VF-25などでは整流効果を踏まえた手首の処理を考えましたが、 今回は脚部にポケットを付けて隠す方法にしているんですよ。 ここはトイの設計時に何度もやりとりした部分です。試作機っぽくて面白い案に出来たと思っています。
これまでのトイは頭部を引き出す時に外れやすい欠点があったので、今回はパンタグラフ 式に伸ばす収納方法にしました。そして顔のデザインは毎回の悩みどころです。 あまり余計な事をするとアクエリオンになるし、ガンダム系になる可能性もある(笑)。 そんな紙一重のバランスで成り立っています。バルキリーの顔はセンサーユニットがたまたま 顔に見えるという設定で、ツノにも旋回式の機銃という意味を持たせています。 今回は開発中の機体なのでヒーローっぽさは抑えつつ、それでいて主役機に見えるギリギリ のラインを意識しました。また後頭部を長くする事でVF-25との差別化も図っています。
主翼はF-14のような可変翼だと従来と同じ様なフォルムになるので、F-15や22の様なオーソドックスな方向にしました。
尾翼は『エースコンバット・アサルトホライゾン』の「震電II」でもやった機構ですが、ローテーション機構により垂直尾翼にも水平尾翼にもなる様にしました。
垂直よりも内側に畳む事でステルス性能を高めたり、下に傾ければVTOL時のエアクッション効果を高める演出も楽しめます。
この機構は可変式ではない主翼の代わりに表情変化を演出し、バトロイドへの変形機構としても利用しています。一石三鳥ですね(笑
僕はフォッケウルフ Ta152の様な「長っ鼻」が好きなんですよ。
VF-25の機首を長くしたのはそのためで、この時は特殊なセンサーを
収めている設定にしました。でもYF-30は任務にあわせてセンサーを
コンテナユニットに収められるので、視界を優先して普通の長さにす
る事にしました。
そしてバトロイド時のコクピットの畳み方も随分と変えています。
VF-25は背中に畳む事で正面からの攻撃に強い設定にしましたが、
機首が垂直になるのでコクピットの中でパイロットシートを回転させて
いたんですよ。
その機構をなくすために今回は機首を水平に収納しています。
ただし、これだけ長い機首を後ろに畳むわけですから、胴体を可変さ
せる両側のシャフトの隙間を通らなければならない。
また側面のストレーキもバトロイド時に重ねて折り畳む方式にしたの
で、これらのパーツが周囲に干渉しない様に考えるのが大変でした。
YF-30最大のポイントの一つです。これまで腕を畳んでいた空間が空いたので、ここに巨大 コンテナユニットを収納する事にしました。ユニットの幅を隠すために両脚に「えぐれ」を入れ るなど、ファイター時にユニットの全体を見せないための工夫をしています。 36個ものミサイルハッチはデジタル時代ならではの表現です。これが手描き作画の時代 だったら絶対に怒られますよ。本当なら大きいフタを1個付ければ済む話ですからね(笑)。 トイでも一つ一つ開閉してくれるのが有り難いです。
このユニットは再出撃の際には丸ごと交換し、戦闘中に不要になれば廃棄できる設定です。これを外すと急にSFメカの様なフォルムになって面白いですよ(笑)。その状態では重心位置が変わってしまうので、カナード翼や可変式尾翼が役に立つというわけです。
VF-25のトルネードパックに付けた回転砲塔が凄く便利だったので、あれを外付けではない収納式にしたのがYF-29でした。
そして、それを越える装備として考えたのがこのユニットです。以前がビーム砲だったので今回はミサイルにしましたが、他にビーム砲、爆装ユニット、レーダー、兵員輸送などの交換ユニットも考慮しています。
これらを換装すれば機能に応じた機体をいちいち作らずに済むし、外付けのスーパーパックと違って空気抵抗も増えません。なんだか統合軍ではなく民間軍事会社に売るために開発した機体みたいですね(笑)。
今回の最大のポイントの一つで、ガウォーク時にも腰が旋回出来る様になっています。
本当はVF-25でやりたかった機構だったのですが、あの時は重量などの問題で断念せざる
を得なかったんですよ。今回のYF-30では腰ブロックを一段下がる機構にして実現しました。これに加えて足首やヒザなども大きく動くので、VF-25以上のポージングが可能です。
作画で描いた様な表情豊かなガウォークが楽しめます。
カラーリングもけっこう難航した部分です。最初はグレー系やブロック迷彩風を考えましたが、主役機には見えなかったんですよ。そこで30周年という事もあって白・黒・赤の昔の主役カラーに戻しました。
ただ、いつもの面積比率では面白くないと思い、正面から見ると黒の面積が増える感じにしています。
今、お話しした構造を本当に上手く実現してくださったと思います。TVシリーズではなくゲームメカでここまで凝ったトイを作ってもらえるなん
て凄い事ですよ。そういう意味でも画期的な商品だと思います。
変形のし易さや固定ロックの利き具合などは立体化しないと分かりませんが、この商品サンプルはかなり僕のイメージ通りに仕上がっています。手早く変形できるのでストレスも少ないし、パーツを移動させた時のパチッと決まる感じも心地良いです。マニュアル車を運転していてシフトがスコンと決まった感触に近いですね。もともと試作段階で既に安心感があったんですよ。
それが次第に実現してゆく楽しさを堪能させてもらいました(笑)。
こうして上がった完成品を見てVF-30の構想を考えるのは楽しいですね。
立体物を見てコスト面や構造面の改善策を考えるなんて実在の戦闘機開発と同じ感覚ですからね(笑)。
DX超合金
YF-30 クロノス
2014年8月9日発売
メーカー希望小売価格 : 21,600円(税8%込)
全高 : 約230mm(バトロイド時)
材質 : ABS、PVC、ダイキャスト製
セット内容 : 本体、交換用手首左右各3種、
ガンポッド、専用ステージ
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